■義務教育は子どもの義務じゃない

 学校へ行く代わりに知ったことがあります。同じように学校へ行かない人が集まる場があることです。そこでは、「どうして行かないの?」なんて聞かないし、学校へ行かないことを責める人もいませんでした。

「小中学校の義務教育は一日も通わずに卒業ができる」ということも知りました。出席日数に関係なく校長が認めれば卒業は認められます。中学2年生から一度も通っていない私も、中学を卒業しています。友だちは小学校の入学式にしか行かずに卒業しています。校長と交渉して卒業を認めさせてくれる大人もたくさんいます。

 義務教育は子どもの義務ではありません。

 高校はもっと自由です。転校もできるし、学校へ通わずに、試験を受けて高校卒業と同程度の資格をもらうこともできます(これを高等学校卒業程度認定試験といいます)。

■学校へ行けないのは「詰み」じゃない

 あれから20年、私は大量のゲームをクリアし、大量の漫画を読み、夜中に中継されるサッカーと五輪を思うぞんぶんに楽しんできました。憧れていた糸井重里さんに会いに行き、記者になり、いまではなぜか忌み嫌っていた将棋が大好きです。

 不登校当時、私は「この先、生きてても何の意味があるんだ」と思っていました。意味はいまだにわからないし、当時、想像した理想の人生も送っていません。でも想像以上に「生きててよかった」と思うことにも出会ってきました。

 私の予想に反して学校へ行かないことは「人生の詰み」ではありませんでした。

 もしいま、これから始まる学校が怖いと感じている人がいるならば、私のように生きている人を知ってもらいたいと思っています。

 どうか「死ぬ以外の選択肢がある」ことを信じてもらいたいと思っています。

(文/石井志昂)

<子どもの相談先一覧>
24時間子供SOSダイヤル 電話:0120-078-310
子どもの人権110番 電話:0120-007-110
チャイルドライン 電話:0120-99-7777

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?