第99回全国高校野球選手権大会は花咲徳栄が初優勝を飾った。春夏を通じての初載冠に花咲徳栄の岩井隆監督は「つらい道のりを一つひとつ、一歩、一歩、選手たちがよく駆けあがってくれた。(埼玉県勢)悲願の初優勝を成し遂げることができました」と歩んできた道程の深さを噛みしめていた。
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岩井監督が感慨深く振り返るのも無理はない。この2年は悔しい敗戦が続いていた。昨夏は作新学院、一昨年は東海大相模に敗退。花咲徳栄に勝利した両校は優勝を果たしている。いわば、優勝校との僅差を肌に感じながらの敗退をこの2年、経験してきたのだ。
今大会中、岩井監督がその肌感覚について、こう話していたものだ。
「過去2年の優勝校との対戦では、全く歯が立たないという試合をしてきたわけじゃなかった。コンマ何センチとか、数秒の差……、みたいな負けでした。試合の流れによっては何とかできた」
今大会のターニングポイントになったのも、関東地区の強豪との対戦となった3回戦の前橋育英戦だ。過去2年をフラッシュバックさせる対戦であったし、だからこそ、この試合の持つ意味を感じていた。
「攻めて、攻めて、攻めまくる。弾が一発も残らないくらい攻めなきゃダメだと言って試合に臨んでいました。ピッチャーもバッターもひたすら攻めてくれたと思います」
1回表に4点を奪う電光石火の先制攻撃で“関東対決”に完勝した。“鬼門”を制すると、その勢いのまま頂点へと駆け上がっていった。
岩井監督にとってはもちろん初優勝だ。1970年1月生まれの47歳だが、実は岩井監督の同世代は、“監督豊作世代”と言われている。2012年の春・夏連覇など、すでに全国制覇を5度経験している大阪桐蔭の西谷浩一監督、春・夏3度の優勝がある東海大相模の門馬敬治監督と同学年なのである。
このほか、前任の清峰時代に今村猛(広島)を育て、長崎県勢初制覇を果たした山梨学院大附の吉田洸二監督も同い年だし、甲子園優勝未経験では、大野雄大(中日)の恩師である京都外大西の上羽功晃監督、唐川侑己(ロッテ)を育てた成田の尾島信治監督、上田剛史(ヤクルト)を育てた関西の江浦滋泰監督などもいる。
今大会は日本文理の大井道夫監督、大垣日大の阪口慶三監督、智弁和歌山の高嶋仁監督など70代監督や、大ベテランの域に達している明徳義塾の馬淵史郎監督、秀岳館の鍛治舎巧監督、11年連続出場の聖光学院・斎藤智也監督など経験豊富な指導者がいた一方、東海大菅生の若林弘泰監督(元中日)、天理の中村良二監督(元阪神)という2人のプロ経験者がベスト4進出を果たすなど、多士済々の監督が集結した大会でもあった。