千鳥 (c)朝日新聞社ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・ライター、お笑い評論家。お笑いWEBメディア『オモプラッタ』の編集長を務める。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、 『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)など著書多数。http://owa-writer.com/blog/
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ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・ライター、お笑い評論家。お笑いWEBメディア『オモプラッタ』の編集長を務める。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、 『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)など著書多数。http://owa-writer.com/blog/

 最近、テレビで千鳥の2人を見かけることが増えてきた。ここ数年、長い長い低迷期を過ごしてきた彼らのこれまでのことを思うと感慨深いものがある。大悟とノブの2人からなる千鳥はもともと大阪を拠点に活動していた。大阪ではレギュラー番組10本以上を抱える人気ぶりだったのだが、2012年にはそれらのほとんどを捨てて、東京に進出してきた。

 しかし、東京で彼らの致命的な弱点が露呈してしまった。それは、東京の仕事で必要以上に身構えてしまう、ということだった。大阪では売れっ子だった彼らも、東京ではほとんど知られていない。2人とも全国ネットのテレビ収録では緊張してしまい、持ち味を出しきれないことが多かった。

 2011年から2013年にかけて『THE MANZAI(ザ・マンザイ)』(フジテレビ系)という漫才コンテスト番組で3年連続で決勝に進み、最終3組にまで残ったが、惜しくも優勝は逃した。2012年には当時の若手の登竜門と言われていた『ピカルの定理』(フジテレビ)に新レギュラーとして加わった。しかし、この番組は2013年に終了を迎えてしまった。平成ノブシコブシ、ピース、渡辺直美はこの番組をきっかけに大きく羽ばたいていったが、千鳥だけは鳴かず飛ばずだった。

 2014年には、先輩芸人である東野幸治が東京でくすぶっている千鳥の2人を案じて、『アメトーーク!』(テレビ朝日)で「帰ろか…千鳥」という企画を行ったこともあった。東野は彼らに対して「もう大阪に帰ったほうがいいのでは……」と手厳しい助言を送っていた。

 そんな彼らが復調するきっかけとなったのが、2014年にテレビ埼玉で始まった『いろはに千鳥』という番組だ。千鳥は大阪時代から「ロケの達人」として知られていた。大阪の街角を歩いて、一般人と触れ合うようなロケ企画では、そのポテンシャルを自然に発揮できることが多かったのだ。『いろはに千鳥』では、2人が埼玉各地に出向いて、のびのびとはしゃぎ回ったり、一般人と親しげに話したり、スタッフに不満をぶつけたりする。その飾らない自然体の姿が面白かった。東京のスタジオ収録の番組では硬くなっていた2人が、東京に来てから初めて持ち味を出した瞬間だった。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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