平均寿命が最も短い県として知られる青森県。その短命の理由を探っていくと、いまの日本人の健康・医療課題と本質が見えてくる。週刊朝日MOOK「おいしい暮らしの相談室 糖尿病&高血圧」では、糖尿病や高血圧に関する地域性を取材。弘前大学大学院医学研究科の中路重之教授に、超高齢社会における健康社会モデルを聞いた。
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厚生労働省が6月14日に公表した「都道府県別年齢調整死亡率の概況」(2015年)で、青森県は男女ともに死亡率ワースト1位となった。また、厚労省「人口動態統計月報年計」(16年)によると、糖尿病による死亡率(人口10万対)で全国ワースト1位に。
だが、弘前大学大学院医学研究科社会医学講座の中路重之教授は、この糖尿病死亡率について、こう指摘する。
「糖尿病が原因となって、がんや脳卒中、心筋梗塞を引き起こし、死亡するならわかるが、糖尿病で死亡することは考えにくい。“統計のあや”の可能性も高いですね」
ちなみに、がん、脳卒中、心筋梗塞は、いまや国民の死亡者数の約半数を占める疾患である。
「糖尿病はたくさんの人が罹って、たくさんの命を奪う国民病」と中路教授は言う。青森のように糖尿病の多いところは必然的にがんや脳卒中、心筋梗塞の罹患(りかん)率も高い。
■肥満が多くて、喫煙率が高い
中路教授によると、青森県民は肥満が多くて病院受診が遅い。受診率の低さは、経済的な面もその根源にある。健診受診率も低く、病気が進行した状態で受診する割合も高いため、がんの場合は進行していることが多く、糖尿病は放置して合併症を引き起こしているケースが多いという。
糖尿病になる原因の一番は、やはり肥満だ。青森の場合、雪国ゆえの運動不足に加え、食塩摂取量が高く、野菜の摂取量が少ない。喫煙率が高く、多量飲酒者も多い。
「テレビなどで青森がとりあげられるときは、青森県民はカップラーメンをよく食べるとか、大皿料理だとかということばかり。寿命は総合点で決まる。生活習慣や健診受診率、病院受診率なども含んだすべてですから」
中路教授が指摘する青森の短命の最大の理由は、「ヘルスリテラシー(健康教養)の欠如」だ。