一方、インプラントを入れてから時間が経過している場合、インプラントと粘膜の間から細菌が侵入し、インプラント周囲の組織が炎症を起こして赤くなっているのかもしれません。骨まで影響が及んでいない「インプラント周囲粘膜炎」の状態なら、口腔清掃を適切におこない洗浄することで、治る可能性があります。
しかし、そのまま放置すると、腫れて出血したり、膿(うみ)が出てきたりすることがあります。この状態だと骨が吸収される「インプラント周囲炎」を発症している可能性があります。粘膜が赤くなっていることに気づいたら、できるだけ早く歯科医院で診てもらうことが大切です。
インプラント周囲粘膜炎は、インプラント治療を受けた患者に高頻度で観察され、インプラント周囲炎の発症率もかなり高く、決して珍しい病気ではありません。誰もがかかる可能性があることを意識しておきましょう。
【Q:人工歯が壊れることはある?】
A:かみ合わせがずれて強い力がかかると壊れることも
上下の歯のかみ合わせは長年の間に少しずつ変化し、その変化に合わせて、天然歯は顎骨(がっこつ)の中で位置を変えます。しかし、骨と結合しているインプラントは位置を変えることができません。
このため天然歯とインプラントの間にすき間ができ、食物が詰まるようになります。かみ合わせがずれると、インプラントに大きな負担がかかり、人工歯が壊れることもあります。歯ぎしりの習慣がある場合も同様です。
また、骨の部分に埋め込まれた「インプラント」と「上部構造」である人工歯の位置関係が適切でない場合でも、人工歯が壊れることがあります。インプラントに無理な負担がかかると、インプラントが壊れることも。歯科医院でのメインテナンスは、かみ合わせの変化をチェックし、変化に応じて周囲の歯と人工歯を調整する目的もあるのです。
【監修】
東京医科歯科大学 歯学部病院 インプラント外来科長
春日井昇平(かすがいしょうへい)歯科医師
(取材・文/中寺暁子)