安倍政権は、諮問会議が獣医学部新設の理論武装をしてくれたので、それを使って、党内の抵抗が少なくなるようにと1校に絞り、さらに条件を細工して、加計学園だけに適用させるようにしたのである。つまり、諮問会議有識者メンバーは、安倍政権を使って規制改革を実現しようとしたが、逆にそれを安倍政権によって悪用され、結果として、とんでもない不正な行為のお先棒を担いでしまったわけである。
ちなみに、先の衆参の閉会中審査では、参考人として、前川喜平前文科事務次官と原英史氏が出席し意見を戦わせたが、これは、実は官邸が仕掛けた罠である。
これはあたかも、ことの本質が規制改革にかかわる2派の対立であるかのような印象付けをねらった舞台設定になっていた。そして、民間有識者としては、批判されれば、自己弁護をせざるを得ず、きっと文科省批判をしてくれるだろう。そうなれば、文科省の利権構造が、安倍政権の主張ではなく第三者の主張によって浮き彫りになり、文科省の信頼度が下がる。その結果、相対的に安倍政権の言うことの信憑性が増すという計算だ。
しかし、残念ながら、その目論見は外れたと言ってよいだろう。いくら、その点について話をしても、冒頭の疑問(加計理事長と安倍夫妻、萩生田官房副長官、下村元文科相らの癒着ぶりなど)が消えない限り、安倍政権がおかしなことをしたという強烈な印象は消えないからである。
●安倍政権に騙されたふりをした有識者のしたたかさ
安倍政権が有識者たちを利用したと書いたが、実は、(これは私の勘だが)有識者たちはそれに気づいていたのではないかと思う。彼らは、安倍政権に騙されるほどお人よしな人たちではないからだ。
彼らは、そこは気づいていたが、規制改革の実を取るために気づかぬふりをしたのではないだろうか。安倍総理たちが、加計学園のためならなりふり構わず圧力をかけてくれる。そう読んで、そのためにうまく理論武装をして官邸関係者を洗脳して、「規制改革と言えば何でもできる」と思わせたのではないだろうか。
有識者たちは、もちろん、汚い争いに直接手を染めるようなことはなく、後に「一点の曇りもない」と胸を張れるような立場をしっかり維持しながら、それをやり抜いた。
以上は、私の推測だが、決して的外れということはないと思う。彼らは、それくらい、したたかな人たちなのである。(文/古賀茂明)