ウィンブルドン自身初のベスト8入りはお預けとなった錦織圭(写真:getty Images)
ウィンブルドン自身初のベスト8入りはお預けとなった錦織圭(写真:getty Images)

 一度つかみそこねた流れは、なかなか取り戻すことができなかった。

 錦織圭は7月7日に行われたウィンブルドン選手権の男子シングルス3回戦でロベルト・バウティスタ(スペイン)に4-6、6-7、6-3、3-6で敗れ、ベスト16入りを逃した。同大会初のベスト8入りは、来年以降に持ち越されることとなった。

 第1セットでは、ゲームカウント4-4からの第9ゲームで鮮やかなフォアのウィナーを決めてブレークポイントを手にしたが、それを逃すと直後のゲームでブレークを許し、第1セットを奪われる。

 第2セットでも、3度のリターンゲームで4本のブレークチャンスをつかむも、いずれもモノにし切れない。この時につのらせた「もどかしさ」が、試合そのものの趨勢を決することになる。

「ああいう場面で取れないことが、今年は多くある。特に今日の試合は、それが一番のきっかけとなって、どんどん悪いリズムになってしまった」

 錦織の逆転勝利への予感は、第3セットを奪って迎えた第4セットの序盤に漂いはじめていた。それまでは相手の早い展開に守勢に回ることが多かったが、鮮やかなカウンターや、ストレートに叩き込むバックハンドのウィナーで、徐々にリズムを引き寄せた。そして第4セットの第1ゲームでは、立て続けにウィナーを決め、客席の歓声を引き起こす。自ら良い流れとスタジアムの雰囲気を作り、猛追撃へのお膳立てを整えた。

 しかしダブルフォルトを機に、自らが描いた逆転勝利へのシナリオを、再び書きかえてしまう。第4ゲームをダブルフォルトを絡めて落とすと、第8ゲームも2本のダブルフォルトがブレークを許す原因となった。うなだれる錦織を尻目に、バウティスタは続くゲームをラブゲームでキープする。酷暑のなか3時間21分を要した熱戦の、幕切れは突然だった。

「守備は僕の方が良い。ベースラインでの打ち合いに持ち込めば勝てると思った」

 約1年ぶりに錦織戦に挑む心境を、バウティスタは振り返る。テニスのロッカールームとは、選手間の情報交換の場だと聞く。

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