嫁姑のいさかいは古来つきることがない。しかし、昨今では「嫁いびり」など過去の話で、我がもの顔でふるまい、家族を振り回す“毒嫁”が急増中だ。女性向け健康・ライフスタイル誌『ゆとりら 夏号』の特集「聞いてちょうだい ウチの毒嫁」で取材した、千葉県在住の女性(76歳)の体験をお届けする。
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私は2人の娘と末っ子の長男、3人の子どもに恵まれました。息子は小さい頃から体が弱く、末っ子ということもあり、甘やかして育てたのは否定できません。食べ物も好き嫌いが多く、いつも病気がちの子どもでした。
それでも中学生になったら趣味の鉄道に夢中になり、随分と元気になって私も夫も一安心。その趣味を続けたまま、息子は大好きな鉄道会社に入社。うれしそうな笑顔を見るのは、私たちも本当に幸せでした。
内気な息子はお見合い結婚でした。うちにはもったいないような綺麗な方が、お嫁に来てくださることになったのです。孫も生まれ、実家に遊びにきてくれたり、ときどきは家族で外食をしたり、あの頃は本当に楽しい時期でした。ただ、その頃お嫁さんに「いい加減、息子さんを甘やかすのはやめてください」と言われたことがあります。息子が食べたいというものを食べさせ、お酒も飲みたければ「いいじゃない」と飲ませる私に、「もっと健康を考えてほしい」と苛立ちを覚えていたようです。
そんなある日、息子に脳腫瘍が見つかり大きな手術をすることに。お医者さんからはかなり難しい手術であることと、ある程度の後遺症は覚悟してくださいと言われ、結局息子は40代にして寝たきりになってしまったのです。
私は病室で泣き崩れましたが、嫁は、日頃の不摂生が祟ったのだと私を強く非難。悲しみに暮れるどころか冷静に、「こうなったのはすべてお義母さんの責任なので、入院費は全額そちらで負担してください。退院してもうちには連れて帰れないので、実家で引き取ってください。それから、私たちの生活費も面倒見てもらいます。この子たちの学費も払っていただきますからね。お義母さんが悪いんですから」と言うのです。「今、ここでお金の話をしなくても……」と言うと、「お金以外に話すことなんてないでしょう? こんなマザコンダメ男と結婚させておいて、謝礼金がほしいぐらいよ!」と逆上。正直、せいせいしたとまで言われ、息子を引き取ることに何の迷いもなくなりました。
息子が結婚して20年。一見、普通のお嫁さんに見えていましたが、家庭内ではどんな嫁だったのでしょう。冷たくされていたのかもしれないと思うと、息子の人生が不憫でなりません。(構成/島田ゆかり)