灼熱のイラン・テヘランで練習する本田圭佑(撮影・六川則夫)
灼熱のイラン・テヘランで練習する本田圭佑(撮影・六川則夫)
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 乗り越えるべきは目前の敵だけではない――日本代表は現地時間6月13日、中立地のイラン・テヘランで2018年ロシアワールドカップ・アジア最終予選のイラク戦を迎える。試合は現地時間16時55分(日本時間21時25分)にキックオフするが、この時期のイランの日没は20時30分前後。選手たちは灼熱の太陽とも戦わなければならない。

 選手たちは同時間帯に行ってきたイラク戦に向けた練習から環境の厳しさを体感してきた。日中の最高気温に到達するのがちょうどこの時間帯であり、日陰でも連日のように35度程度を記録。「見ているだけでつらいでしょ」と報道陣に苦笑いしたのは槙野智章だが、たしかにじっとしているだけでも体力は消耗していく。日向、芝の上という条件であれば、体感気温は40度を超えるだろう。

 その不可避の厳しい環境下でどうやって戦っていくか。その方向性について10日の練習前に監督と選手が話し合ったが、ロッカールームで行われたディスカッションは予想外にヒートアップした。練習開始時間の17時になってもピッチに姿を現さず、予定から約30分が過ぎたころにようやく練習が始まるほどだった。

 選手たちの話を総合すると、指揮官は高い位置でのプレッシングから速攻を仕掛けるというこれまで通りの戦い方を求める一方、選手たちはその戦術を続けるのは体力的にも難しいと主張。議論は平行線をたどり、その時点では結論が出なかったという。

 ハリルホジッチ監督はアウェー(今回は中立地だが)では相手の長所を消すことに注力し、素早い攻守の切り替えからチャンスを窺うという戦い方を選択してきた。特にオーストラリア、UAEといった強敵相手の絶対に落とせない試合ではそれが顕著だったが、相手に主導権を渡すスタイルだと守備において運動量とインテンシティを保つことが必須条件。そうしないと防戦一方となるが、炎天下で90分間そういう戦い方を続けるのは体力的に厳しい。

 それゆえ、ポゼッションもしていきたいという選手たちの言い分は理解できる。「ボールを走らせろ。ボールは疲れない」とは故ヨハン・クライフ氏の言葉だが、ボールを回すことで自分たちの体力を温存する、さらには守勢に回る相手を走らせて体力を削っていく。そういう時間帯はたしかに必要だ。当然、ハリルホジッチ監督もそれは承知しているはずで、最近は選手の意向も汲む柔軟な姿勢を見せていることもあり、最終的にはやるべきことを求めながら選手たちの言い分も受け入れるはずだ。

 そうなると試合のカギを握りそうなのが本田圭佑だ。

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