「ひたすら寂しい。もう一度、一緒に呑みたい」
そのまま目を伏せ、唇をかんだ。
Charは2015年に還暦記念アルバム『ROCK十』をかまやつさんのサポートを得てリリース。CDでコラボレートした「Gでいくぜ」という曲は、武道館でも2人で演奏し歌った。
「全然芽が出ない頃に、ムッシュに声かけていただいて、バックバンドをやってたんですよ。40年以上前ですけれど」
そうふり返ったのは、THE ALFEEの高見沢俊彦。
「ツアーにもまわらせていただいたりして、かなりお世話になりました。ひとかけらでも、僕らの中にDNAとして残して、それを維持して、まだまだ頑張っていきたいと思います」
このように、かまやつさんは、音楽を通して、さまざまなアーティストたちと心を通わせてきたのだ。
そんな“ミュージシャン、ムッシュかまやつ”らしく、祭壇には約6000本の花で巨大なギター画が描かれた。
ボディの赤はバラ。ネックとヘッドとピックガードの白はカーネイション。トルコキキョウとユリなどによる白の背景にくっきりと映える。このギターは、VOXのマークⅥがモチーフ。かまやつさんがスパイダース時代に愛用していたモデルだ。
祭壇前にはいつもかぶっていたニット帽と、くわえていたフランスたばこ、ゴロワーズ。スタインバーガーのヘッドレスギターを手にしたかまやつさんの遺影が眺めている。
この会の代表発起人は、スパイダースのリーダーでドラマーだった、田辺エージェンシーの田邊昭知社長。発起人は、スパイダースのメンバーだった堺正章、井上順、井上堯之、大野克夫、加藤充に加え、吉田拓郎、ユーミン、森山良子など。世話人は、かまやつさんの所属した事務所、ケイダッシュの川村龍夫会長と松田英夫社長が務めた。参列者は約1000人(一般の献花はなし)。小田和正、小室哲哉、ミッキー・カーチス、内田裕也、岸部一徳、吉田美奈子、夏木マリ、奥田民生、ミッキー吉野、つのだ☆ひろ、藤井フミヤ、大橋純子、南こうせつ……なども次々と献花に訪れ、かまやつさんがいかに多くの人に愛されていたかを改めて知る会になった。
会の進行役は堺正章。ジョークも交えられ、終始明るい雰囲気で進んだ。スパイダース時代のかまやつさんは遅刻・欠席の常習犯。
デビュー曲の「フリフリ」はかまやつさん作詞作曲にもかかわらず、ジャケット写真にその姿がない。なんと、撮影に来なかったそうだ。心配した堺が自宅に連絡をすると、男性が電話に出て「ずいぶん前に出ましたよ」とのこと。
しかし、明らかに、かまやつさん本人の声だった。「いつも遅刻してきて、電話をかけると毎回きまって、明日だと思ってた、っていうんだよね」(井上)。
スパイダースが集まって演奏するのは実に10年ぶり。オリジナルメンバーがそろうのは20年ぶり。「フリフリ」「サマーガール」「ノー・ノー・ボーイ」「バン・バン・バン」といったかまやつさんが手がけたナンバーを披露した。
ムッシュかまやつというミュージシャンがすぐれたメロディーメイカーであることを再認識させられた。
長い間ドラムスティックを手にしていなかった田邊昭知は、この日のために練習に練習を重ねたという。そして、ドラムスの名器、グレッチのセットを用意した。
「(田辺の演奏は)命がけでした」(堺)
「10年ぶりにスティックを持って、明日あたり大変だと思います。魂のこもったドラムを聴かせてもらいました」(井上)
お別れ会の終盤は、参列したミュージシャンがステージに勢ぞろいし、かまやつさん作曲の「あの頃君は若かった」を合唱。
そして、会場は暗転。マイクスタンドに照明をあて、生前のかまやつさんの声による「どうにかなるさ」が流れ、参列者は遺影に別れを告げた。(取材と文 神舘和典)
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