「パコック駅じゃないとわかりません」
「アウンバンから先は?」
「アウンバン駅で聞いてください」
酒のにおいが漂ってきた。もう、一杯やっているようだった。ほかの路線も聞いてみたが、すべてわからなかった。
これがヤンゴン中央駅である。
ヤンゴン中央駅は長距離列車も発着するが、環状線などの市内列車も発着する。しかしその切符は、乗車ホームのなかほどにある小屋のようなオフィスで販売している。
このヤンゴン中央駅の建物をもう一度見てほしい。この建物のなかで、機能しているのは、間口が50センチほどの当日の切符を売る窓口だけなのだ。
ため息混じりでいつも眺める。この駅舎が機能するようになるのは、いったいいつのことなのか。
下川裕治(しもかわ・ゆうじ)
1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など