もっとも広く伝わっているのは、富士山の神さま「木花開耶姫(このはなさくやびめ)」の名前に由来する説である。さまざまな神話を持つ神さまである木花開耶姫だが、仕事のひとつに富士山の上空から、種を蒔き花を咲かせるというものがある。この花こそが「サクラ」なのだ。「さくやびめ」の「さくや」が「サクラ」となったという。他にも、田の神さまを意味する「サ」の居る場所(御座/みくら)という説もある。

 いずれにせよ、種まき、田植えの時期を桜が知らせる役目を担っていることを意味する説が多い。

●ニニギの選択からサクラの儚さが

 神話の話になるが、木花開耶姫は瓊瓊杵命(ににぎのみこと)の妻である。瓊瓊杵命は、伊勢神宮の神さま・天照大神の孫神であり、皇室の祖先とされている。この瓊瓊杵命、木花開耶姫をめとる際に姉神・磐長姫(いわながひめ)も一緒にと提案されるも、美しかった木花開耶姫だけを選び、醜かった磐長姫を二柱の父神・大山祇神(おおやまつみのみこと)に送り返してしまう。これに対し父神は激怒、「磐長姫はあなたの命が石のように永遠でいられるように願ってのこと。これを送り返したことであなたの命は木花開耶姫のようにはかなく短いものとなるでしょう」と告げる。

 瓊瓊杵命の子孫である人間たちに寿命があり、美しいサクラの花がすぐに散ってしまう理由もここにあるというわけだ。

戦国武将が使っていた家紋は無数にあるが、この中にこれほど愛されている桜をモチーフにしたものがひとつもないのだ。100種以上の家紋の図版に用いられている梅とは、扱いがずいぶん異なる。「短命」や「儚さ」といったイメージが家督に関しては相応しくなかったのだろう。

 にもかかわらず、サクラには日本人の心に訴えるものがある。なにしろ、一番好まれている「ソメイヨシノ」は、自生もできず短命で、もっとも儚いサクラなのだから。(文・写真:『東京のパワースポットを歩く』・鈴子)

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