ジムナスティック・タラゴナで活躍する鈴木大輔(写真:Getty Images)
ジムナスティック・タラゴナで活躍する鈴木大輔(写真:Getty Images)
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 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表はロシアW杯出場に向け、3月24日にUAE、28日にタイとアジア最終予選を戦う。招集メンバーが注目されるが、おそらくは昨年11月の予選と大きな変更はないだろう。そもそも、大幅な変更はチームの軸を揺らがせるものであって、今年9月までの予選を戦い切るには、現メンバーが主力になるはずだ。

 もっとも、今のメンバーでW杯本大会を勝ちきることは難しい。これまでチームの顔だった本田圭佑や長友佑都など2011年アジアカップ優勝メンバーは絶対的な存在ではなくなった。変革期にあるのは間違いなく、プラスアルファが必要になる。

 日本代表で絶対的主力と言えるのは、主将の長谷部誠だけだろうか。そのリーダーシップと経験。なにより、戦局を読み、試合を読む力は卓抜としたものがある。攻守の両輪を回すMFと言えるだろう。ハリルJAPANのベストゲームの一つ、オーストラリア戦も戦術的な能力の高さで、チームを駆動させていた。他の選手は横一線。それが実状だろう。

 では、前回選出されたメンバー以外で、どんな選手が控えているのか?

 筆頭として、スペイン2部ジムナスティック・タラゴナで1年目は3位、2年目はDFの主軸として活躍するセンターバック、鈴木大輔の名前を挙げたい。

「日々アップデートされる感覚」

 鈴木は語っているように、スペインでは日々、気を抜けない競争がある。毎試合、対戦するストライカーのレベルは高い。愚直な印象が強かったかも知れないが、駆け引きやボールをつけるスキルも高くなっており、なにより全体に落ち着きを与えられる逞しさを身につけた。

 ディフェンダーは、強敵と相まみえることによって腕を上げるのだろう。

 その意味では、鹿島アントラーズの昌子源もクラブW杯を戦う中、めきめきと頭角を現した。アフリカ代表のマメロディ・サンダウンズとの試合は手こずったが、その後、アトレティコ・ナシオナル、レアル・マドリーと試合を戦う短時間でゾーンに入っていった。読みが良く、身体も強く、ステップワークも調整できるが、決して無理をしない。その慎重さにセンターバックの適性を見る。

 もし日本がW杯で世界を相手に勝利を目指すなら――。鈴木、昌子の二人は、代表の主軸を担っていくべきだろう。ザックJAPANは結果的に惨敗したが、守備者としての硬質さと対応力が足りなかった。同じ轍を踏んではならない。センターバックは、他にも柏レイソルの中谷進之介が、ワールドクラスのストライカーに鼻をへし折られることで成長が見込める。

 センターバックだけでも、+要素はある。あとは、それを戦力としてどう馴染ませていくか。ハリルJAPANは修羅場を戦う一方で、チームを強化していく戦略の充実も求められる。

小宮良之
1972年生まれ。スポーツライター。01~06年までバルセロナを拠点に活動、帰国後は戦うアスリートの実像に迫る。代表作に「導かれし者」(角川文庫)、「アンチ・ドロップアウト」3部作(集英社)、「おれは最後に笑う」(東邦出版)など。3月下旬に「選ばれし者への挑戦状」(東邦出版)を刊行予定