ラグビー蹴球部の山下大悟監督と対話を重ね、「伝統」というキーワードにたどり着いた。
「守る伝統と攻めの伝統があるとしたら早稲田は後者です」
付属高校から数えて9年間早稲田に通い、父、兄、叔父も早稲田大学出身。だからこそ、「皮膚感覚で早稲田らしさがわかる」という佐藤さん。まず、チームを象徴するユニホームのリニューアルに取り組んだ。
「機能性も重視しながら、少しでも体を大きく見せて対戦相手にプレッシャーを与えるなど、攻めの姿勢を凝縮しました」
エンジと黒の色の組み合わせはそのままに、筋肉の流れを強調するボーダーを描いたり、風の抵抗を抑えるシルエットに変更したり、工夫を凝らした。
さらに、プロジェクトを支える大きな柱として、クラウドファンディングを使った資金調達を提案した。OBやファンに支援を呼びかけ、1千万円が集まった。これを、ユニホームや応援グッズの製作、トレーニング器具の購入など「選手の強化のための費用」に充てた。
チームと支援者が一体になって戦いに挑んだ結果だろうか。試合は接戦の末、25対23で早稲田が勝利をおさめた。
■周囲との温度差を乗り越える
海外の高級家具メーカーやファッションブランドの仕事からコンビニに並ぶガムまで、多岐にわたる作品を手掛け、ニューヨーク近代美術館(MoMA)など名だたる美術館に収蔵されたものも多い。世界中からオファーがあり、現在も400近いプロジェクトを進行中だ。そんな佐藤さんだが、大学入学時、建築を選んだ理由は意外にも「深い意味はなかった」という。進路に迷った末、アウトプットがイメージできるものを選んだのだ。
「入学してみると周囲は、絶対に早稲田で建築を学びたくて来たという熱い思いのある人ばかり。温度差に驚きました」
同級生に比べて、自分に足りないところを客観的に見つめる。これを繰り返し、「長期戦でやるしかない」と気負いがなくなった。
「建築学科は自分で答えを見つけなさい、というスタンス。特に指導教員の古谷誠章先生はそうでした。学生の可能性を見越して自由にさせていたんですね」
佐藤さんは自身を振り返り、学生にエールを送る。
「10代で会社経営を始めたり、製図ペンで似顔絵を描いて『笑っていいとも!』の似顔絵コーナーに出たり、かなり自由にやっていました(笑)。学生時代って、どうしてもバランスが取りづらいものなんです。でも、自分のタイミングでそれを収束させて、プロになっていければいいのかなと思いますね」
(文/宮崎香菜)
※『早稲田理工 by AERA2017』より抜粋
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