

創設以来、さまざまな場面で社会を支える人材を世に送り出してきた早稲田大学理工学術院。『早稲田理工 by AERA2017』で、デザイナーから医師まで、多彩な卒業生たちを訪ね取材した。その中から特別に、早稲田大学ラグビー蹴球部のユニホームをデザインし話題となった、デザイナーの佐藤オオキさんのインタビューを公開する。
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いまから15年前。佐藤オオキさんは、大学院の卒業旅行でミラノを訪れた。現地は、ちょうど世界最大級の家具見本市「ミラノサローネ」の開催期間中。建築を専攻していた佐藤さんは熱気に包まれた会場を歩き、著名なデザイナーたちが枠にとらわれず、家具やプロダクトをデザインしているのを目の当たりにした。デザインの自由さ、面白さにすっかり魅了され、一緒にいた友人たちと決意する。
「皆でデザインオフィスを始めようと盛り上がったんです」
帰国後、すぐに実家のガレージでオフィスを設立。nendo(ネンド)と名づけた。
佐藤さんが学生だった2000年前後は若者の起業が注目を集め始めていた。実は佐藤さんは学部生のころから貿易会社や人材派遣会社を経営した経験があり、nendo創設メンバーはもともと仕事仲間でもあった。
「違う学部の学生が起業の話、聞かせてよって訪ねてくることもありました。早稲田には人と違ってもそれはそれで面白い、という雰囲気があり、ふらっとデザインオフィスを始めても、誰にも驚かれませんでしたね」
nendoは、座ると床に落ち葉の画像が現れるベンチや、外壁や内装を200メートルの布で覆ったレストランなど、ユニークな作品でたちまち注目を浴びた。
「大学院の修了制作にした『引出しの家』という住宅もnendoの作品のひとつです」
設立からわずか1年で、ミラノサローネにも出品を果たした。
■ラグビー蹴球部との新プロジェクト
2016年11月23日。佐藤さんはラグビー関東大学対抗戦が開催されている東京・秩父宮ラグビー場にいた。対戦相手は宿命のライバル慶應義塾大学。激戦を繰り広げる15人の選手たちが身につけたユニホームはnendoがデザインしたものだ。
佐藤さんは今、強豪と言われながら、しばらく優勝から遠ざかっている母校のラグビー蹴球部のブランディング計画に取り組んでいる。チームが抱える課題をデザインの力を使って解決していくプロジェクトだ。
「チームの魅力は何か、と考えるところから始めました」