日本人として、またアジア人男子として史上初のグランドスラム制覇を目指す錦織圭。しかし2017年最初のATPツアー大会となったブリスベン国際(ATP250)では、準決勝で世界ランク3位のスタン・ワウリンカを下しながら、決勝では格下の17位グリゴール・ディミトロフに敗れて準優勝に終わった。これでツアー決勝での敗北は昨年から数えて5大会連続だ。全豪オープンの前哨戦でも勝ち切れなかった事実は、16日に開幕する本番への不安材料となった。
さらに13日に決まった全豪オープンのドローは、錦織にとって非常に厳しいものとなり、決勝はおろか、準決勝に進出するにも相当な困難を強いられそうだ。
そのいばらの道は、昨年飛躍した48位アンドレイ・クズネツォフとの1回戦から始まる。ここと2回戦(相手はニコラス・アルマグロとジェレミ・シャルディの勝者)、そして順当にいけばアルベルト・ラモス・ビノラスとの対戦となる3回戦までは、おそらく問題なく突破できるはずだが、次のラウンドからは試練が続く。
4回戦の相手は10位トマーシュ・ベルディヒか、元王者のロジャー・フェデラーとなるはずで、前者との対戦成績は4勝1敗だが、後者とは2勝4敗と分が悪い。
史上最多17度のグランドスラム優勝を誇るフェデラーは昨年のウィンブルドン以降、ひざと腰の治療に専念するために公式戦に出場しておらず、17位までランキングを落としていた。そのため、今大会のドローでは彼がどこに組み込まれるかが最大の焦点のひとつとなり、結果、錦織には極めて厄介な相手と早い段階で当たる可能性が生まれてしまったのだ。「ここのところ、出来るかぎり厳しい練習をしてきた。準備はできているよ」とフェデラーは大会前の会見で語っている。
ここを突破できたら、準々決勝では新王者アンディ・マリーと戦うことになるだろう。通算対戦成績は錦織の2勝8敗、昨年にかぎれば1勝4敗だった。ただしその1勝は全米オープンの準々決勝で奪ったもので、デビスカップとツアーファイナルズでも激戦の末に惜敗している。自ら認めるように「重要なポイントでの集中力」がカギとなるか。
ベスト4以降は、スタン・ワウリンカとノバク・ジョコビッチが勝ち残っているはずだが、そこまでの道のりも準決勝以降と同じくらい困難なのである。
そのほか、男子の日本人選手は西岡良仁、予選を突破した添田豪が出場する。女子は日本人選手が6人出場するが、最も期待されているのは大坂なおみだろう。昨年のこの大会では初の本戦出場でいきなり3回戦に進出。今回はそれ以上の高みを狙うが、1月第1週のASBクラシックの準々決勝で左手首を負傷して途中棄権しており、万全とは言えない状態で本番を迎えることになりそうだ。(文・井川洋一)