“良い投手”と繰り返しているものの、「スターテレグラム」紙のマック・エンゲル記者の指摘は手放しの賞賛とはとても言えまい。

 メジャー入り当時の期待度を考えれば、メジャーで通算100試合を投げ、46勝30敗、防御率3.29という数字は実際に力を出し切っているとは言い切れない。2015年3月にトミー・ジョン手術を受け、2015年は全休、昨季も先発機会は17試合(7勝5敗、防御率3.41)のみに終わった。

 そして、スモールサンプルとはいえ、プレーオフでは通算0勝2敗、防御率5.40。耐久力、大舞台での強さを証明していないのであれば、レンジャーズが今オフ中に積極的に契約延長に動かなかったのも無理もないように思えてくる。

 そういった状況を考えれば、2017年は紛れもなくダルビッシュのメジャーキャリアを左右するシーズンになる。

 トミー・ジョン手術を受けた投手が完調に戻るのは、復帰2年目というのが一般的な見方。右腕に疲れの蓄積はたまっておらず、年齢的にも脂が乗っているだけに、ここで渡米以降でも最高の1年を過ごす可能性は低くないだろう。逆に言えば、次の段階へのブレイクを果たすのに、今年以上の好機はないかもしれない。

 筆者もまた、ダルビッシュこそが日本人投手として最高の素材と考える1人である。同じように考えるスカウト、関係者は後を絶たない。そして、それほどの能力を持った右腕にとって、2017年こそすべてが結実し、“グッド”ではなく“グレート”な実績を残す年になる。

 2013年以来の200イニング突破は最低条件で、プレーオフでの“3度目の正直”に期待がかかる。それらを成し得れば、1年後には金銭的にも盛大な形で報われるはずなのである。(文・杉浦大介)