PED法で手術をする出沢医師
PED法で手術をする出沢医師
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毎朝のストレッチ「波止場のポーズ」
毎朝のストレッチ「波止場のポーズ」

 重症の患者や痛みに長年苦しんでいる人を救う外科医。自身の技術を上達させ、患者の負担が少ない低侵襲の手術を実践する名医に、週刊朝日MOOK「『名医』の最新治療」で迫った。その中から、出沢明PEDクリニック院長で、帝京大学溝口病院客員教授でもある、出沢明医師(64)を紹介する。

■虫の目と鳥の目で、手術する

「この綿みたいなのが、ヘルニアの原因の髄核です。鉗子でつまんで、取り出していきます」

 2016年10月上旬、東京・二子玉川駅前にある出沢明PEDクリニック。広さ8畳ほどの手術室には、心地よいクラシック音楽がかかっている。この日手術を受けるのは長野県から来た男性(70代)だ。長年患っていた腰椎椎間板ヘルニア(以下ヘルニア)が悪化し、歩行が困難になった。

 ヘルニアとは背骨を形成する腰椎と腰椎の間にある組織(髄核)が飛び出し、神経を圧迫する病気。日本人の約120万人がヘルニアと言われている。出沢医師は自ら開発した特別な内視鏡を使い、手際よく痛みの原因である髄核を取っていく。

「少しだけチクッとしますよ」

 部分麻酔のため患者と会話もできる。この日の手術はわずか1時間で終了した。

「もう大丈夫です。2、3時間もすれば歩けるし、明日には退院できるはずです」

 医師の言葉に、信じられないという表情の男性。ベッドから丁重にお礼を述べた。

 この出沢医師の手術は「PED法(経皮的内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術)」と呼ばれる。患者の負担の少ない超低侵襲治療で、2003年に出沢医師が日本で初めて取り入れた。

「ヘルニアの手術方法はいくつかあり、背中側を3~4センチ切って、神経の束を器具でよけながら髄核を取るのが一般的です。また2センチほどの切り口から内視鏡を入れて手術する方法もあります。いずれも全身麻酔下で行われ、1週間~10日ほどの入院が必要です。患者さんからは『もっと早く復帰したい』との声が多くあり、医療機器メーカーにアイデアを出しながらPEDを完成させました」

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