「年間1位」ながら「年間王者」を逃し落胆する浦和イレブン。(写真:Getty Images)
「年間1位」ながら「年間王者」を逃し落胆する浦和イレブン。(写真:Getty Images)

 12月3日、鹿島アントラーズがJリーグの2016シーズンを制した――。

 埼玉スタジアム2002で行われた明治安田生命Jリーグチャンピオンシップ決勝第2戦。第1戦を1-0で制していた浦和レッズの優位を予想する声も多かったが、鹿島のMF小笠原満男が「(第1戦0-1という結果を)ルールを考えれば、不利とは思っていなかった」と語ったとおり、鹿島が一発勝負における心理面の強さ、駆け引きの上手さを見せ付ける形で、逆転勝利を飾った。

 勝負の妙を生み出したのは「アウェイゴール」というレギュレーションだ。欧州のカップ戦などでもみられるホーム&アウェイでのノックアウトマッチに適用されるルールで、2試合合計のスコアが同点の場合、「アウェイ(敵地)でより多くのゴールを奪ったチームの勝利とする」仕組みのこと。この結果、アウェイの埼玉スタジアムにて第2戦を2-1で制した鹿島が、トータルスコア2-2ながらもアウェイゴール差で上回り、優勝を飾ることとなった。今回のチャンピオンシップには、このアウェイゴールも同じだった場合に年間順位が上のチームが優勝するというルールもあるのだが、今回で言えば鹿島が1-0で勝ったケースのみ適用されるレアケースのルールであり、試合の駆け引きの中で大きな意味を持つことは特になかった。

 冒頭の小笠原のコメントは、つまり「負けたとは言っても、アウェイゴールは一つしか取られていない」ということ。鹿島は「2点取ればいい」というシンプルな状況設定になるなかで、「浦和のほうがやりにくかったかもしれない」(DF西大伍)という特殊な流れを生み出すこととなった。1失点しても、「どのみち2点が必要なので」(小笠原)と慌てなかった鹿島は、前半のうちに同点としたことで逆に浦和に心理的なプレッシャーを与えることに成功。浦和側が攻めるのか守るのかどうにもハッキリしないなかで、相手DFのミスを見逃さずにPKを奪い、FW金崎夢生のこの試合2点目となるゴールで勝ち切ってみせた。

 そしてそれは、昨季より「2ステージ制+チャンピオンシップ」という大会形式が採用されるなかで、当初より懸念されていた結末でもあった。

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