「いつもこの大会に出ることは大きな目標だし、戦えることをワクワクしている。良い形でシーズンを終えるビッグチャンスでもある」
今季はキャリア最高となる57の勝利数を手にし、既に数々の大舞台も踏んできている錦織圭が、胸を高鳴らせながら挑む大会――それが、長いシーズンを上位で終えた8選手のみで競われる、ATPツアーファイナルズ。大会は現地時間11月13日にロンドンで開幕し、錦織は同14日にスタン・ワウリンカとの対戦で初戦を迎える。
闇の中に浮かび上がるコート、全ての選手個々に与えられる専用ロッカールームに、テムズ川を走るフェリーでの選手送迎――日頃のツアーとは一線を画する煌びやかさと「選手への6つ星対応」を誇るこの大会は、そのフォーマットも通常のトーナメント形式とは異なる。8人の選手は4人ごとのグループに振り分けられ、総当たり戦の結果、各グループの上位2選手が準決勝に進出。グルーブ戦の順位は、状況によってはセット数やゲーム数まで関わってくる。
錦織が属する“グループ:ジョン・マッケンロー”に名を連ねるのは、世界1位に座したばかりのアンディ・マリーに、9月の全米オープンを制したスタン・ワウリンカ。そしてシーズン終盤の猛追により、ロンドンに駆けこんできたマリン・チリッチ。いずれも勢いと高いモチベーションを兼備した、現在好調の猛者たちだ。
マリーの優勝を願う地元英国メディアが「恐怖の組」と称するグループに入った錦織だが、当の本人は「どちらにしろタフかなという思いはあるので、そんなには気にしていないです」と意に介さぬ様子。「この8人の中でどうやって戦っていくかがチャレンジにはなりますが、上に行くために必要なこと」と、むしろ難しい挑戦を歓迎している風だ。
その錦織が目指すはもちろん、まずはグループ戦突破。その条件は他の選手の動向次第で変わってくるが、現在21連勝中というマリーの好調さ等も考えると、やはり初戦のワウリンカ戦が鍵となるだろう。
トップ10に定着して3年以上になるワウリンカと錦織の、今季の対戦成績は1勝1敗。直近の対戦は全米オープンの準決勝で、この時は6‐4、5‐7、4‐6、2‐6で錦織が破れている。序盤は、ベースラインから下がらず相手の時間を奪った錦織が完全に支配するも、徐々に、緩急織り交ぜ広角に打ち分けるワウリンカのパワフルなバックハンドに主導権を奪い取られた、悔しい敗戦であった。
雌雄を決する今季3度目の対戦も、“相手の時間を奪いたい錦織”と、“時間を作って相手を押し込みたい”ワウリンカとの、技と頭脳、そして体力のぶつかり合いが予想される。