また、施設には訪れた人が話しやすいようにという配慮がなされている。建物には壁一面がほぼ窓になっている部分があり、そこから周囲の緑や青空を臨むことができる。景色とともに光もたくさん入るので、木造の柔らかい雰囲気と相まって、明るくリラックスできる空間になっている。奥には個室があり、プライバシーを確保したいという人にも対応している。

 個室のほかにも、施設のいたるところにはソファとテーブルがあり、訪れた人は好きなところで相談することができる。そのソファセットに、必ず置いてあるのがティッシュだ。これは相談する人のほとんどが話していくうちに、時には話し始めるなり、涙を流すからだという。トイレはスタッフ用と、来客用とに分かれているが、来客用のトイレが広くつくられているのは「ひとりで泣けるように」(秋山さん)という配慮からだという。それほど、相談する人の多くは涙するのだ。

 本音を吐露しながら涙を流す人々の姿をみて、秋山さんは改めて「必要性は感じていたが、これほどまでにマギーズセンターを必要とする人がいたのか」という驚きにも似た思いを抱いたという。

 がんとの闘いは長期にわたることも多い。患者はもちろん、その周囲の人も激しく消耗していく中で、相談相手を見つけるというのは想像以上に難しいことなのかもしれない。

 秋山さんはマギーズ東京について「がんに関わる方にとって、光を見いだせるような存在になっていきたいです」と話した。(文・横田泉)