マギーズ東京には看護師など、医療の知識のある相談員3~4人が常駐しており、さらに管理栄養士や臨床心理士といった専門家も日替わりでやって来る。そのため、漠然とした不安な気持ちを吐露するのはもちろん、病状や治療についても具体的に相談することができるのだ。予約なしで気軽に訪れることができるので、マギーさんが描いたコンセプトでもある「医学知識のある友人」に会いに行く、という感覚で利用することができそうだ。
マギーズ東京はオープンからまだ半月ほどだが、オープンしている10時~16時までの間、ほとんどひっきりなしに人がやって来るという。その悩みはさまざまだ。家族と自身との治療方針のギャップに悩む患者さんや、がんでわが子を亡くした母親、がんの検査結果を聞きに行くのが不安な人……など、あらゆる人がやってくる。相談員はそういった人たちの話をじっくり聞いて、一緒に道を探していくという。
なかには、こんな人もいた。医師からがんの手術をすすめられているが、不安で手術に踏み切れないという患者さんだた。客観的に話を聞く限り、手術をした方がいいのは明らかだったが、相談員は手術をすすめるようなことは言わなかったそうだ。それは、マギーズ東京にこんなモットーがあったからだ。
「ここでは、相談に来た方が自分の力を取り戻すために、自分が進むべき道を一緒に整理して探していく、という方法をとっているんです。ご自身で話をする中で、道を一緒に探していって、その道をご自分で進んでいってもらうというのが、ここのモットーなんです」(秋山さん)
相談員は話を聞く中で方法や道を探るのであって、道を指し示すことはしないのだという。この患者さんの場合も、相談員は内心は手術を受けた方がいいとは思いながらも、「なぜこの患者さんはここまで手術を怖がっているのだろうか」ということを探ろうと、話を聞き続けた。結局、その場で結論は出なかったものの、後日患者さんは自分で結論を出し、「手術をすることにしました」と電話で報告してくれたという。
「この患者さんの場合は、話をすることで気持ちを整理して、改めて家に帰ってから自分で不安の原因を見つけたようです。そしてその不安を取り除くためにはやはり手術が必要だ、という結論を出されたようです」(秋山さん)
こうした、話の中で道を見つける人もいれば、純粋に話をするだけですっきりしていく人もいるという。