1台あたり8個のバッテリーを搭載したターレが、約780台。1台のターレに搭載されるバッテリーは8個あるため、榊オートで管理するバッテリーの数は約6240個にのぼる計算となる。
バッテリー管理を主に担っている宮口さんを、榊オートで見かけることは少ない。常に築地場内を巡回しているからだ。バッテリー液の入ったポリタンクと工具を乗せた宮口さんのターレに、私は同乗させてもらった。
バッテリーのメンテナンスは、築地に点在しているターレを見つけ出しながら回るわけではなく、充電中のターレを計画的に巡回していく。大卸の作業場には、会社ごとに充電する場所が指定されており、大卸以外のターレは、共同充電スペースが場内に数箇所設けられている。しかし、これら共同充電スペースだけでは、1600台ものターレの充電は到底まかないきれない。私はかねて、これだけの台数のターレが、いったいどこで充電されているのか不思議に思っていた。宮口さんが、ターレの1日の動きを教えてくれた。
築地市場場内で仕事を終えたターレは、「正門2階」と「新立駐」の2箇所いずれかに戻ってくる。「正門2階」とは築地市場正門にある立体駐車場2階を指し、「新立駐」とは勝どき門立体駐車場地下1階を指す。いずれの場所にもターレの充電設備があり、夜間から未明にかけて、ターレを駐車しながら充電できる仕組みだ。宮口さんは、この2箇所で休んでいるターレを回りながら、バッテリーの整備をしている。
正門2階も新立駐も、その光景は圧巻だ。延々と、果てしなく、どこまでも同色同型のターレが並ぶ。
「これだけのターレの充電管理を担当しているのは、駐車場の警備員さんなんですよ。あの人たち、すごいんです」と宮口さん。
全台を同時に充電することはできないため、充電が終わったターレから、向きを逆にしていく。正門2階では後部が手前に向けられているターレが、新立駐ではその逆の向きのターレが、充電済みのものだ。
警備員は、充電管理だけでなく、ターレの配置にも気を配っている。この使用者のターレはこのあたりにと、それぞれの使用者が出しやすい位置に、最終的にターレが配置されるよう、並び順まで考慮しながら管理されているのだと話してくれた。
ターレにも鍵は付いているが、メーカーと車種で共通のものだ。榊オートや警備会社は、メーカーと車種ごとの共通キーを持っている。よって、ターレの所有者がキーを預ける必要はない。翌朝(または翌未明)には、充電を終えてそれぞれの定位置に配置されたターレに再び使用者が乗車し、そこから場内の各方面へと出動していくのだった。
充電管理を担う警備員さんも確かにすごいが、6000個を超えるバッテリー管理を担う宮口さんたちもすごい。静まった築地で、眠るターレを管理する人々は、まさに縁の下の力もちだと思った。