認知症になると、介護やお金など、さまざまな問題がふりかかってくる。いざというときに慌てないためにも、認知症になる前からできる準備はしておきたい。週刊朝日ムック『すべてがわかる 認知症2016』では、さまざまな地域サポートや、成年後見制度について取材している。今回はその中から、毎日の暮らしをサポートする、日常生活自立支援事業を紹介する。
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一人暮らしで身寄りがない人にとって、将来認知症になったときの不安はより大きい。もの忘れが多くなったと自覚してはいるものの、後見制度を利用するほど判断能力が不十分でもない……そんなときに生活を支援してくれるのが、社会福祉協議会が実施している「日常生活自立支援事業」だ。認知症などで判断能力が多少低下しているけれど、日常的な生活を支援してもらえば、自立した生活ができるといった場合に利用できる。
具体的な支援の内容は、福祉サービスの利用や年金をもらう手続きの援助、税金・公共料金・医療費・家賃など日常生活に必要なお金の管理、印鑑・預金通帳や証書といった大切な書類の保管などだ。地域の社会福祉協議会に相談すると、専門員が家に来て、本人の意思や希望を確認し、「支援計画」を立てて契約を結ぶ。相談や契約は無料だが、生活支援員による直接の援助は有料だ。
ただし病院の入院契約、施設への入退所契約、消費者被害の取り消しなどは手続きの方法を教えてくれたり、付き添ってくれたりするが、代理で申請や契約はできない。このため、契約するだけの判断力があるうちは日常生活自立支援事業を利用し、判断力が著しく低下したり財産の処分、施設への入居が必要になったりしたら、成年後見制度を利用するという方法もある。また、遠方に住む親族などが後見人になっている場合、日常生活自立支援事業と併用することで、生活に必要なお金の出し入れは生活支援員にやってもらうということも可能だ。
公的なサービス以外では、NPOなどが運営する身元保証や家事代行も増えている。身元保証、生活支援、財産管理、任意後見、死後の始末までを一手に引き受けるサービスもある。しかし契約にはさまざまな費用がかかるほか、事前の同意が不十分だとトラブルが起きやすいので、利用する際は慎重に選びたい。(取材・文/中寺暁子)
※週刊朝日ムック『すべてがわかる 認知症2016』より