MCI 5つの定義(週刊朝日ムック『すべてがわかる 認知症2016』より)
MCI 5つの定義(週刊朝日ムック『すべてがわかる 認知症2016』より)

 物忘れが多くなり、できないことが増えてくると不安になるものです。近年は医学的に
認知症予備軍を診断できるようになり、早期から対策をとれるようになってきました。週刊朝日ムック『すべてがわかる 認知症2016』で紹介した、認知症を予防する方法を特別に公開します。

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 認知症はある日突然発症するわけではなく、徐々に進行していきます。このため、まだ認知症にはなっていないけれど、年齢相応の認知機能レベルより低下している時期があります。こうした健常と認知症の境目にいる時期を軽度認知障害(MCI)といいます。認知症との大きな違いは、全般的な認知機能は正常で、日常生活に支障をきたすほど認知機能は低下していないという点です。

 厚生労働省の推計では、MCIの人は約400万人いるとされています。しかしすべての人が、すぐに認知症へと進行していくわけではありません。長期間MCIの状態を維持したままの場合や健常に戻る場合もあります。けれどもMCIを放置すると5年間で約50%の人が認知症を発症するといわれています。5年以内に認知症になるのか、ゆるやかに認知症になっていくのか、健常に戻るのか……その分かれ道の一つとなるのが積極的に予防に取り組めるかどうかです。お多福もの忘れクリニック院長の本間昭医師はこう話します。

「認知症になってからではなくMCIの段階で診断するメリットは、本人が病気のことをよりきちんと理解できるという点です。個人差はありますが、病気を受け止められると、予防に取り組む意欲につながりやすいのです」

 認知症を予防する一つの方法が、MCIの人が低下しやすい「できごと記憶」「注意分割機能」「実行機能」の三つの認知機能を鍛える方法です。

 できごと記憶は体験したできごとの記憶なので、日記をつけることがトレーニングになります。その日のできごとを日記に書けるようになったら、次は昨日のできごと、その次は一昨日のできごとというように、難易度を上げていくことがポイントです。

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