例えば、スマッシュのミスが目立った福原に対して、キムは高い確率で強打を決めてきた。また、3球目攻撃もたびたび仕掛け先手を取った。3球目攻撃とは、サーブ・レシーブの次の球で攻撃を仕掛ける卓球の基本戦術。守備が主体のカットマンでありながら攻撃に転じるキムのような選手は女子にはとても珍しい。

 結局、キムにゲームカウント4-1で敗れた福原だが、準々決勝までの快進撃は評価に値する。特に過去の対戦で3勝14敗と大きく負け越していたシンガポールのフォン・ティエンウェイにストレート勝ちしたのは大きな収穫だ。終始引き締まった表情と集中力には、心身の状態の良さが表れていた。

 福原は団体銀メダルに輝いた2012年ロンドン五輪以降、常に自分の体と向き合ってきた。ロンドン五輪直後には右ひじを手術。さらに2年後の2014年には左足の小指の付け根を疲労骨折し、戦線離脱を余儀なくされた。この時期を振り返り、福原は「本当につらくて暗い時期だった。(選手として)もう必要ないと言われたらどうしようと不安だった」と語っている。ほかに腰痛も患うなど、リオ五輪までの4年間は悲鳴をあげる体と折り合いをつけるのに必死だった。

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