歯周病は、中年以降の日本人では80%がかかっている病気です。初期は目立った症状がなく、ゆっくり進行するため、「静かな病気(サイレント・ディジーズ)」とも呼ばれ、日本人が歯を失う最も大きな原因となっています。
しかし安心してください。歯周病は正しい知識さえあれば防ぐことができる病気なのです。それなのに、世の中には歯周病の専門家から見て、首をかしげたくなるような不正確な情報が蔓延(まんえん)しているといいます。
そこで、歯周病の原因・治療・予防についての研究や歯科医師の教育を行っている日本歯周病学会と、日本臨床歯周病学会が全面的に協力し、歯周病に関する“正しい”知識の普及を目的とした初の書籍、『日本人はこうして歯を失っていく 専門医が教える歯周病の怖さと正しい治し方』(朝日新聞出版)を発売。歯周病になりやすい人はどんな人なのか? 歯周病リスクチェック表とともに、本書から特別に紹介します。
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同じようにブラッシングをしていても、歯周病になりやすい人とそうでない人がいます。その違いはどこにあるのでしょうか。
歯周病の発症や悪化にかかわる要因は(1)口の中の細菌の攻撃力、(2)患者自身の抵抗力、(3)生活習慣(環境)の3つに大きく分けることができます。
まず「(1)細菌」について考えてみましょう。歯周病のおおもとの原因は、口の中の歯周病菌です。口の中には、良いものも悪いものも含めて一般的に培養できるものは400~500種類ほど、培養できない細菌も入れれば700種類ともいわれる細菌が棲んでいます。この中に、より多くの種類の「歯周病菌」が揃っている人のほうが、リスクが高い可能性があります。
また、「レッドコンプレックス」と呼ばれる悪性度の高い3種類の歯周病菌を全部持っている人もリスクが高いとされています。とくにきわめて悪性度の高い「P.g.菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)」を持っていると、歯周病は5倍進みやすいといわれています。
「(2)患者自身」にかかわる要因として、わかりやすい例が糖尿病の人です。どんなに歯周病菌が強力に攻撃してきても、外敵に対抗する体力や免疫力が高ければやっつけることができますが、糖尿病で免疫力が低下している人は、歯周病を発症しやすく、悪化しやすいことがわかっています。
また年齢が高くなればなるほどリスクは高まり、女性は思春期や妊娠中、更年期など、ホルモンが変動する時期は症状が悪化しやすくなります。あまり多くはありませんが、遺伝的に歯周病になりやすい人もいます。