ただし、こうした否定的な見方に意見するメディアも。『ニューヨーク・ポスト』紙はイチローの記録達成が迫ると「ローズ氏はイチローの偉業達成の瞬間を台無しにすべきではない」と釘を刺していた。イチローが所属するマーリンズの地元紙『マイアミ・ヘラルド』は「ローズ氏の同意があろうがなかろうが、イチローの通算安打は祝福する価値がある」とローズ氏の態度をやゆしつつ地元のヒーローをたたえた。

 メジャーリーグが最高峰だと誇る米国のファンたちが日米通算という形に違和感を持つのは、ある意味で当然とも言える。Aロッドことアレックス・ロドリゲス(ヤンキース)が「メジャーリーグは唯一無二の存在」と主張するのも理解はできる。日本のファンの立場に置き換えれば、韓国リーグや台湾リーグでの記録を日本プロ野球での成績と合算することに誰もが納得するのかというところだろう。

 また、メジャーリーグの公式記録に日米通算が含まれないのは道理。しかし複数の国にまたがっての記録で公式記録ではなかろうとも、偉業は偉業として気持ちよく祝福するのが野球ファンのあるべき姿というものではないだろうか。実際にこうしたスタンスに立ってイチローを讃えるメディアが複数あったのも事実だ。

 さて、イチローにはまたすぐに大記録達成の瞬間が待ち構えている。メジャー通算3000安打だ。現地15日終了時点で残り21本。今のペースで行けば今季中の達成は確実だろう。メジャーリーグで3000安打といえば殿堂入り確実な偉業中の偉業。こちらを達成したならば、さすがにアスタリスク付きとは誰も言うまい。イチロー本人も心の底から喜べるはずで、万人がイチローにあらん限りの賛辞を送るに違いない。大記録達成の瞬間を目の当たりにしたばかりで贅沢な話ではあるが、今からその瞬間が待ち遠しい。