それだけ長い経験と熟練の技術が必要な競技ということであり、彼らが操る飛行機が飛び回る様子は、ただ見ているだけでも理屈抜きに楽しめる。

 とはいえ、やはりレースである以上、勝負も気になるところ。レース会場には大型のモニター画面が設置され、フライト映像と合わせてタイムが表示されるので、それを見ながら観戦したい。

 モニター画面ではフィニッシュタイムだけでなく、途中のラップタイムも表示される。随時タイムを確認すれば、「この飛行機はストレートが速い」とか、「この飛行機はターンで遅れる」といったことが分かってくる。レッドブルエアレースは、F1などのように一斉スタートで順位を争うわけではなく、一機ずつ飛ぶタイムレース。こまめにタイムを確認することで、レースは一層楽しめる。

 また、エアレースはカーレース以上に風や気温などの気象条件の影響を受けやすい。実際の会場に足を運べば、風の向きや強さが分かり、どんな環境で飛行機が飛んでいるのかも実感しやすい。夕方になって気温が下がったり、風が強くなったりといった気象条件の変化が、タイムにどんな影響を与えているかを考えながら見てみると、エアレースの奥深さをより味わえるだろう。

 さらにもうひとつ、会場観戦ならではの見どころが、パイロンヒット(コース上に立てられた円すい状のゲートに、機体が接触すること)である。

 もちろん、機体がパイロンに接触すること自体も、なかなかの壮観だ。翼によってきれいに切り裂かれたパイロンがふわりと宙を舞う瞬間は、会場全体が何とも言えない切ない空気につつまれる。

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