大学発ベンチャーの数も大きく伸びている。21年度は3306社で、前年度から401社増加。その要因の一つが、14年に施行された産業競争力強化法だ。大学をイノベーションの担い手とすべく、政府は国立大学法人がVCを設立できるようにし、東京、京都、大阪、東北の4大学に設立資金として計1千億円を拠出した。それ以降、各大学が起業支援や人材育成に競って力を入れ始めた。
とはいえ大学発ベンチャーは、大学や学生が多く、資金の出し手である大企業が集まる大都市に偏っているのが実情だ。都道府県別にみると、トップの東京都が1118社で、2位の大阪府の242社に5倍近くの差をつけている。3位が京都府の207社、4位が神奈川県の177社、5位が福岡県の162社だ。
だが、地方にもベンチャーの熱は確実に広がりつつある。その一つが、岐阜大学だ。
大学がある中部地方は、トヨタ自動車やデンソーなど日本を代表するメーカーが多い。そのため若者は大企業志向が強いとされ、「ベンチャー不毛の地」と呼ばれてきた。そんな土地でいったい何が起こっているのか。
岐阜大が起業家育成に力を入れ始めたのは、17年。当初から旗振り役を務めるのが、学術研究・産学官連携推進本部の上原雅行・副部門長だ。
上原氏は阪大で医学博士号を取得。その後、2年間大学に残り、自身の研究テーマを企業に説明して回り、共同研究を持ちかけた。その結果、大手電機メーカーから声がかかり、社員として研究をしつつ新規事業立ち上げに携わった。その経験を買われ、岐阜大に移った。
■ベンチャー生む岐阜大「起業部」
岐阜大で注目すべきは「学生ベンチャー」の活躍ぶり。その核となっているのが「起業部」だ。
起業部は20年、上原氏と同大大学院生の長曽我部竣也さんらが中心となり設立。現在32人の学生が在籍する。事業のアイデアを出し、各部員からフィードバックをもらう「壁打ち」や、地域の経営者や起業家を呼んで勉強会を開催するなどしている。