6回1死からドナルドソンに対して3-0としてしまい、結局フルカウントから四球を出してしまった前田。バティスタに対しては低めのツーシームとスライダーでなんとか長打は避けようとしたものの、またも3-1とカウントを悪くしてしまう。そしてフルカウントからの6球目、スライダーが高めに浮いたところをバティスタがバット一閃。完ぺきに捉えられたボールはライナーで左翼スタンドへと消えていった。『Statcast』によると、推定飛距離は約138メートル、打球速度は約175キロという完ぺきなホームランだった。
この一発の伏線は、やはりドナルドソンへの四球だろう。初回にはストレートの四球を与えたように、昨季のア・リーグMVPを前田はかなり警戒していたように見えた。両チーム無得点のまま迎えた6回、警戒レベルは序盤に比べて確実に高まる状況だが、四球で走者をためたくはないジレンマ。バティスタに対しても3-1となったとき、連続四球を出した後で初回に強烈なサードライナーを打たれた大砲エンカーナシオンを迎えることを避けたい思いが前田の頭をよぎったとしてもおかしくはない。それがスライダーの失投を招いたのかもしれない。
「1球だけ取り消せるなら、バティスタにホームランを打たれた球」と試合後に振り返ったように、前田にとっては悔いの残る1球だった。
結局、前田はこの回を終えたところで降板。ただし7回表に味方打線が追い付いてくれたことで黒星は消え、6回を102球、2安打、4四球、7奪三振、2失点という結果だった。ロバーツ監督が期待した怪物退治こそ完遂することができなかったものの、先発投手としての役割は十分以上に果たしてみせた。監督も「全体的には実によかった」と高評価。わずか1球の失投で高い代償を払ったものの、この日のピッチングは前田にとって大きな収穫にもなったに違いない。