スタートは注目度の低いプロ入り。だが、ここから新井は新しい歴史をつくった。2000安打を達成した選手のドラフト指名順位(ドラフト制後入団の達成は30人目)を調べると、1位が7人、2位が8人、3位が7人、4位が4人、6位が1人、7位が1人。6位は新井が初めてだ。3位指名までが73%を占める。7位は福本豊(阪急)だが、福本は高校から社会人を経ており、大学から社会人を経ずに直接プロへの入団では、新井の敬愛する金本知憲(東北福祉大→広島)の4位を抜いて、新井の6位が最下位指名となる。

 大卒選手の下位指名は、球団から大学への遠慮などもあり、選手本人に強いプロ入りへの意思がないと難しい。大学球界で実績を残した上位指名候補であれば、「プロ待ち」と呼ばれる社会人チーム(企業)への推薦入社を担保しておきながらドラフト指名を待つ、ということもできるが、下位指名候補では難しいのが実情だ。プロ入り後も、注目度の低い状況から、結果を残し続けていくことを余儀なくされる。

 プロ1年目の99年、甲子園のヒーロー東出が高卒新人ながら53安打を放ったのに対し、新井は21安打だった。この時点で東出の2000安打を予測した人はいただろうが、新井が達成することを予測した人はいなかったはずだ。「あのへたくそだった自分がよくここまで、と思う」とは新井の記録達成時の言葉だが、不器用を絵に描いたような男だからこそ、すべてのプロ野球ファンに祝福されたのだろう。

 古巣への復帰で2000安打を達成したのは、小久保裕紀(ソフトバンク)に次いで2人目だ。広島生まれでカープファンとして育った選手が、古巣で記録を達成。心地よいストーリーだ。

文=日刊スポーツ・斎藤直樹

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