タイスコアで迎えた後半の序盤、ミランは追加点に迫る。51分、精彩を欠いていたカルロス・バッカが、この日唯一の輝きを見せ、鋭い反転シュートでブッフォンを襲う。こぼれ球にバロテッリが反応したが、シュートはクロスバーを直撃した。

 しかし、次の1点を奪ったのは、ここ21戦20勝1分けと圧倒的な強さで5連覇に向かう王者ユーヴェだった。決めたのは、本田と同じ背番号10だ。60分に直接FKでポストを叩いていたポール・ポグバが、その5分後にCKから勝ち越しゴールを挙げる。

 74分に本田を下げてルイス・アドリアーノを投入したミランは、さらにケヴィン=プリンス・ボアテングも送り出したが、流れを変えることはできなかった。

 試合後、ミランのシニシャ・ミハイロビッチ監督は「負けに値しない」と述べた。実際、序盤の闘志を常に発揮していれば、合宿などという事態は起きなかっただろう。同じユーヴェと対戦するコッパ・イタリア決勝に向け、自信につながったことは間違いない。

 だが試合中、そしてシーズンを通じ、それを保てないのがミランの課題だ。継続性の欠如は、順位が如実に表している。

 イタリアメディアの本田の採点は、概して及第点、ないしそれをやや下回るものだった。いわく、「十分なパフォーマンスではなかった」(『ガゼッタ』)、「前半はイニャツィオ・アバーテとのコンビが戦術的にミランで最も機能した一つだったが、後半はチームと一緒に停滞」(『コッリエレ・デッロ・スポルト』)。「中盤とサイドでバランスを与えたが、攻撃で影響を残せず」(『milannews.it』)。

 つまり、「一定の働きは評価できるが、十分ではない」ということだ。

 実際、この日も本田は献身的なプレーを見せ、攻撃時には頻繁に中央に顔を出して幅を持たせようとした。33分にカットインから力強いミドルシュートも放っている。だが、得点につながる決定的プレーは多くなく、セットプレーもバロテッリの独壇場となり、見せ場をつくる機会がなかった。

 すでに汚れ役としての本田の働き、そしてその献身性は認められている。そのうえで求められるのが、違いをつくるようなプレーだ。それができてこそ、本人が言う「真の本田」だろう。残り6試合とコッパ決勝で、それを見ることができるだろうか。

文=中村大晃

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