また田島貴男は自身のユニット“オリジナル・ラブ”やソロによる活動を続けながら、ブレーク中の3人組“Negicco”にも楽曲提供。昨年、日比谷野外音楽堂で行われた彼女たちのコンサートにも飛び入りした。ヤング・アイドルと1966年生まれの男性ミュージシャンが違和感なく共演し、それが満場の喝采を得る…。これはかつて想像もつかなかったことだ。「そうかな」と思う方は、時代をそのまま40年ほどずらしてみればいい。そして想像してほしい、キャンディーズと春日八郎の組み合わせがうまくいくかどうかを。

 50歳にして旬。武道館のステージに立つ人気者たちにとって、“老い”はおろか“円熟”もはるか先の風景に違いない。とにかく勢いがあって、はつらつとしているのだ。今も坂を登っている真っただ中で、いつか到達するであろう真の頂点に向けて牙を研いでいるという印象も受けた。だが、スポットライトを浴びる立場だからこそ、ファンに喜びを与える立場だからこそ、常にフレッシュでいなければならない、と自身を暗示にかけている部分もあるはずだ。

 会社員で50歳といえば、そろそろ定年を意識しながら動いているはず。子供は大きくなり、親は年老いていく。自分の中だけに残っている若き理想と、外から見た姿のギャップが一番大きくなる時期かもしれない。

 そんな現実はあるものの、オーディエンスは現実を忘れてコンサ―トを楽しんだはず。世良公則&ツイスト「銃爪(ひきがね)」(増子、トータス、田島が歌唱)や沢田研二「勝手にしやがれ」(全員登場)で、ここまで音楽家とファンが一体となって盛り上がれるのはアラフィフ世代の、思いっきり誇っていい特権だ。

 2006年のイベント《ROOTS 66 -DON'T TRUST OVER 40-》から10年を経て、一層パワーアップした形で行われた《ROOTS66-Naughty50-》。当時と現在とでは世相も経済も異なっているはずだが、出演者の面々は相変わらずの人気を保ち、大会場にファンを集めるちからがある。この間隔で行けば、次回は今から10年後の2026年ということになる。還暦を迎えた彼らが、いかにして再びやってくる“丙午”と向かい合うのか。くれぐれも長生きしてその日を見届けたいと思う。(文・原田和典)

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