このレッテル貼りの心理は非常に強烈で、例えば一度「仕事ができない奴」というレッテルを貼ると、相手のいいところは見つけられず、ダメなところばかり見つけて小言を言ってしまうことになる。

 また、あなたが嫌っている人は、あなたにイヤなことばかりする。それはあなたが相手に「イヤな奴」とレッテルを貼り、イヤなことをしないだろうか、とそのことばかりに注目している心理によることがある。

 つまりレッテルを一度貼ると、人の心は自分が貼ったそのレッテルに強烈な影響を受け、レッテルの内容が真実か否かの判断を放棄してしまう。レッテルというのはそれほどの力を持っている。たとえばペットボトルのミネラルウオーターのラベルをはずし、かわりに「お酢」と書いてはっておくと、中身は水であっても誰も飲まないだろう。さらに、ボトルの中身を味見してラベルの表示が正しいか確かめよう言う人はごく少数だろう。

 ところで、最近は、新卒の採用の際に履歴書に出身学校を書かせない会社もあるという。面接官に心理的なレッテル貼りをさせないための工夫だ。先入観なしで、相手の話を聞くことによって、その人物の真の姿や実力を見極めることができれば、今回の騒動のような誤ったキャスティングを未然に防ぐことができるようになるだろう。