例えば、第1話だったかな、信繁と信幸が敵から隠れながら移動する場面で、堺さんが「十石峠を抜けますか」と言って、大泉さんが「いや、軽井沢に向かおう」という会話があります。すると「軽井沢なんて近代になって開発された避暑地の名前がでるのはおかしい」と思う方もおられるかもしれません。しかし軽井沢というのは中山道の宿場として歴史があって、勝頼の出した書状にも名前が出てくる。そして十石峠のほうは当時の動きからすると敵の勢力範囲内です。そちらにいったら捕まっていた可能性が高い。こういった裏の選択肢についても、裏付けはちゃんととってます。

 その他にも、知恵という言葉はこの時代にあるのか、この場面は真田安房守か安房守殿か、いや単に安房だけでいいんじゃないか、などなど一言一句検討して、それを三谷さんに戻します。これを脚本が来るたびに最低でも2往復はします。多いときは5回くらいやりとりします。

 最新の研究を元にするので、視聴者さんが習ったことと違っていたりしてツッコミがくることもあります。笑。

 あとドラマを見ている方から「おいおいこんなにあっさり本能寺の変や山崎の合戦が終わっちゃうのかよ」という声も聞くんですけど、実は真田家の目線で描けば本能寺も遠い国でやってる遠い話なんですよね。

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