現在の日本において、親の世代と子どもの世代の人口を同じにする人口置換水準は2.07~2.08と試算されている。日本の最新の出生率が1.42であることを考えれば、少子化対策は


“待ったなし”の問題。国はもちろんのこと、各自治体でも少子化対策に取り組んでいる。自治体ではお見合いをあっせんしたり、子育てにかかわる費用の負担や、保育所の増設、その他保育サービスの充実を図ったり、どこでも地道な対策が行われている。

 これらの施策から、一歩踏み込んだ感のあるのが、文京区だ。日本の自治体の長として初めて育児休暇を取得した成澤廣修区長のもと、「ぶんきょうハッピーベイビープロジェクト」をスタートさせた同区だが、その一環としてつくられたのが「ライフ&キャリアデザイン ワークブック」。

 今年の「成人の日」を祝う催しで配布されたこの冊子は、これからの人生をどのように生きていくか、結婚するか、しないか、子どもが欲しいかどうかなど、自分が将来を具体的に思い描き、記入していくもの。ここまでならよくあるものかもしれないが、自分の家事スペックはどの程度か、人生でかかるコスト(お金)はどれくらいか。また、妊娠だけでなく不妊についての解説や、健康に暮らしていくための食に関する知識まで、さまざまなことが掲載されている。

 それはなぜか。これには、同区が2014年に実施した「結婚・妊娠・出産・育児に関する意識調査」の結果が大きくかかわっていると冊子の制作に携わった同区保健衛生部健康推進課長の渡邊了さんはいう(妊娠、出産情報サイト「出産準備サイト」より)。

 結婚の理想年齢を聞いた調査で、女性は自分の体のことを考慮し20代後半に、男性は経済的な問題を基準に考え30代前半を理想の結婚年齢とする人が多いことを知った。また、「理想とする子どもの人数」より「実際に持つと思う子どもの人数」が少ない結果にも、「年齢的に難しいと思うから」(50.4%)のほか、「経済的に負担が大きいと思うから」(42.1%)、「育児、家事にかかる負担が大きくなってしまうから」(25.3%)という理由があることにも着目。これから結婚する人たちに、経済的な不安を漠然と持つのではなく、具体的な数字で表し、家事能力があることが結婚にも子育てにもプラスになることをしっかり記すことにしたのである。

 結婚、妊娠、出産は個人的な問題だが、日本という国が今までどおり、高齢者も子どもたちも、そして両方を支える若い世代が住みやすい国であるためには、ひとりひとりが考えるべきことが大切。その意味で同区の成人式で配布されたこのガイドブックは、その端緒になるものといえるかもしれない。

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