旭化成の村山謙太(左)と紘太(C)朝日新聞社
旭化成の村山謙太(左)と紘太(C)朝日新聞社

 もはや正月には欠かせない存在となった「箱根駅伝」。そんな箱根人気を受けて、近年注目度が高まっているのが、元日に開催されるのが「全日本実業団駅伝」(通称・ニューイヤー駅伝)だ。かつて箱根路をかけぬけた多くのヒーローたちが、実業団に進み、この舞台で活躍している。

 そんな「ニューイヤー駅伝2016」をより楽しむために、今大会の注目選手をピックアップした。

■大注目の「双子対決」

 今回、注目度が高いのは、旭化成の“双子ルーキー”村山謙太と村山紘太だ。大学時代は、兄の謙太が駒澤大学、弟の紘太は城西大学で、ともに箱根駅伝を走っている。大学時代の紘太は記録でなかなか謙太に並ぶことができなかったが、大学4年時から急激に力をつけ、社会人1年目にして、兄弟そろって世界陸上出場を成し遂げた。初出場となる今年のニューイヤー駅伝でも彼らがチームの両輪となる活躍をみせれば、旭化成が1999年以来の優勝を果たす可能性もありそうだ。

 昨年の世界陸上1万メートルに出場し、2度目のニューイヤー駅伝にも大きな期待が寄せられているのが設楽悠太(ホンダ)だ。東洋大学時代は箱根で2度優勝を経験し、昨年のニューイヤー駅伝でも4区で区間賞という衝撃デビューを果たしている。昨年11月に行われた東日本実業団駅伝でのホンダの優勝にも大きく貢献した。今、伸び盛りの選手だ。

 双子の兄・設楽啓太(コニカミノルタ)も、東洋大学の出身。4年時の箱根駅伝は、山登りの5区で区間賞を獲得し、東洋大4度目の優勝に大きく貢献した選手だ。昨年のニューイヤー駅伝でも4区で区間4位と健闘したが、昨年は故障のため大会出場が少なく、復調具合が気になるところだ。

 また、設楽兄弟の同期にも有力選手が多い。大学3年時に5区で区間賞に輝き、日本体育大学の前年19位からの劇的優勝の立役者となった服部翔大(ホンダ)や、駒澤大学1、2年のときに区間賞を獲得し、昨年のニューイヤー駅伝でも4区2位と上々のデビューを果たしている窪田忍(トヨタ自動車)も活躍が期待される。

■箱根スターや元「山の神」の走りにも注目

 村澤明伸(日清食品)は東海大時代3年間にわたりエース区間2区を走った。1年時に2区2位、2年時は2区区間賞、3年時は2区3位と活躍したが、4年時にはチームが箱根予選落ちという悔しさを味わった。社会人になってからも故障続きだが、復調してきているようだ。

 佐藤悠基(日清食品)は、東海大学1~3年時に3年連続区間賞をとった箱根のスーパースター。12年にはロンドン五輪、13年は世界陸上にも5千、1万メートルで出場して、トラック競技でも強さをみせている。

 今井正人(トヨタ自動車九州)は、順天堂大学時代に3年連続5区区間賞に輝き、「山の神」と呼ばれた選手。社会人になってからは苦しい時期もあったが、昨年の東京マラソンで7位(日本人男子最高位)となり、悲願だった世界陸上のマラソン代表の座をもぎとった。だが、直前の体調不良で出場できなかった。その悔しさを、今回のニューイヤー駅伝にぶつけて、“完全復活”を印象づけたいところだ。

 東洋大学時代は、「新・山の神」と呼ばれた柏原竜二(富士通)も、今回が4度目のニューイヤー駅伝。まだニューイヤーでは目立った活躍ができていないが、こちらも復調が期待される選手だ。

■優勝の行方は?

 前回優勝のトヨタ自動車、ここ4年間、1位か2位という安定感抜群のコニカミノルタ、2年連続3位の日清食品グループの3チームが優勝争いの核となりそうだが、侮れないのが旭化成だ。

 過去には21回の優勝を成し遂げている古豪。近年は、12年の3位が最高順位とやや停滞しているが、昨年は村山兄弟をはじめ有力なルーキーが多く、ニューイヤー駅伝の予選となる九州実業団駅伝では、ぶっちぎりの優勝で力を見せつけている。

 エースの鎧坂哲哉は、昨年11月に開かれた「八王子ロングディスタンス」の1万メートルで14年ぶりに日本記録を更新。好調を維持してニューイヤー駅伝を迎えることができれば、旭化成の優勝も見えてくる。

(ライター・椎名桂子)

※出場選手は当日変更になる場合もあります。