「この日を境に彼との心の距離がぐっと縮まりました。以来、エスカレートして顔も映り込んだ写真や、彼の指示する下着を身に着けて写真を撮り、それを送ったりもするようになりました。会ったことはないけれど彼を信頼しているので。不安はないですね」

 今ではシャワーや入浴前、服を脱ぎ、下着を脱ぎ……とその様子を一枚、一枚、スマホで撮影し彼に送ったりもする。彼もそれに応えてみずからの男性器が勃起した様子を撮影して送り返してくる。性的結合こそない。でも互いに心と体が結ばれたと実感できるという。

 こんな赤裸々なやりとりがあっても法曹界での判断は、不倫かどうか判断がわかれるという。実際に性的結合があったわけではないからだ。冒頭部で紹介した女性弁護士が解説する。

「性的な言葉と写真のやりとりがあったという事実だけをもって裁判所が『不倫』とは認めることはないかと。それを裁判所が認めれば既婚男女が配偶者以外の異性と性的内容を含む話題を口にしただけで慰謝料請求されてしまう社会になってしまいますから」

 もっとも今後、世論動向次第では「判例も変わってくる可能性がある」(弁護士)という。所詮は“ネット上の人”というリアルではない気軽さがごく普通の主婦をここまで大胆にさせる。

 かつて「旅の上の恥は掻き捨て」という言葉があったが、現代社会では、「ネット上の恥は掻き捨て」といったところか。ネット上の空間がリアルなのか、それともバーチャルで済まされるものなのか、今後、議論される問題である。

※本文中、仮名はカタカナで表記

(フリーランス・ライター 秋山謙一郎)