「絵のような風景を楽しむ列車」がこの秋、北陸に登場した。富山県高岡市から海へ向かうJR氷見線と、山へ向かうJR城端線で走行する観光列車「ベル・モンターニュ・エ・メール(通称・べるもんた)」である。「べるもんた」は、10月10日の運行開始以来、乗車率がほぼ100%。車窓は額縁の造りになっており、「走るギャラリー」がコンセプトとのこと。見える風景は? 乗り心地は? カメラを手に乗車してみた。
「べるもんた」は1車両だけで、定員は39人。運賃は乗車料金に加えて、指定席料金の520円が必要で、週末のみ運行となっている。土曜日は北陸新幹線の停車駅である新高岡駅を出発し、北に向かって氷見駅までを2往復する。氷見線の絶景は、雨晴海岸付近から望む海越しの立山連峰だ。列車は景観のいい場所で一時停車してくれる。日曜日は高岡駅を発着点とし、新高岡駅を経て、南へ向かって城端駅までを2往復する。城端線は、のどかな田園風景が広がる砺波平野などを走る。
秋晴れの日曜日の午後、城端線の復路のチケットを購入し、ホームへ急いだ。列車の正面に回ると、海と山の風景に「Belles montagnes et mer(ベル・モンターニュ・エ・メール)」と書かれたエンブレム。フランス語で「美しい山と海」という意味らしい。車体の色は深緑を基調とし、窓をゴールドで縁取ってある。古いヨーロッパ映画で見た列車のようなレトロな雰囲気だ。
座席は、車窓と平行にいすが並んだ横向きのものと、ボックス席の2パターンがある。特等席は縦84センチ、横252センチのガラスをはめ込んだ窓の前だろう。金色の額縁に彩られた大作を見る感覚で、風景を楽しむことができる。
鉄道ファンと見られる男性は、座席に着くと窓際にスマートフォン2台を置き、一方の動画スイッチをオンにした。城端駅発車から高岡駅到着までの風景を約50分間、ノンストップで撮影していた。もう一方では、時々、静止画を撮影しながら、背もたれに上半身を預けて車窓の風景を目で追っていた。