ボックス席では親子連れや、中高年のグループが、雑談しながら小旅行を楽しんでいた。すし5貫に氷見はとむぎ茶が付いた「ぷち 富山湾鮨 セット」(要予約、税込み2000円)や、沿線の地酒とおつまみを合わせた「ほろ酔いセット」(数量限定、税込み1500円)を味わうこともできる。往復約1時間半の旅の間中、ほろ酔いだった乗客もいた。

 車内は、ほのかに木の香りがする。JR西日本の広報担当者が車内の装飾について紹介してくれた。

「つり革の持ち手には高岡銅器をイメージした装飾を施し、沿線4市にちなんだ図柄が描かれています。扇風機や照明カバーなどにもこだわり、井波彫刻の8作品や、伝統工芸品などを展示しています」

 車窓を絵に見立てるだけでなく、車内に工芸品を展示した「べるもんた」、確かに「走るギャラリー」である。観光PRは抜かりなく、富山県南砺市の職員や観光ガイドグループの女性が同乗し、車窓から見える風景や沿線の見どころ、祭りなどをアナウンスしていた。

 「べるもんた」は、JR西日本が北陸新幹線の開業効果を定着させ、沿線から少し離れた海・山の観光地にまで足を運んでもらうために導入したらしい。だが、富山県民の乗客も少なくない。親子3人で乗車した地元住民に感想を聞いてみた。

「城端線、氷見線は高校生ぐらいしか乗らない生活路線ですから、観光客の方が乗ってくれれば、活性化につながるでしょう。富山県人は日常生活ではマイカー移動ばかりだから、べるもんたに乗ると旅行客の気分になれますよ」

 この時期、沿線の様子は、稲穂を刈り取った後の殺風景な田んぼも少なくない。しかし、「べるもんた」の車窓から見れば、額縁の中の特別な光景になる。紅葉の風景や晩秋の趣、一面の雪景色……乗るたびに違う「作品」を楽しんでみてはどうだろうか?
(ライター・若林 朋子)

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