「飛び出し坊や」を店先に設置するモロッコ人。なんだか楽しそうだ(モロッコ・フェズ/撮影・松岡宏大)
「飛び出し坊や」を店先に設置するモロッコ人。なんだか楽しそうだ(モロッコ・フェズ/撮影・松岡宏大)
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なぜか「飛び出し坊や」にごはんを食べさせるポーズをするインド人女性。完全に誤解されている(インド・バラナシ/撮影・松岡宏大)
なぜか「飛び出し坊や」にごはんを食べさせるポーズをするインド人女性。完全に誤解されている(インド・バラナシ/撮影・松岡宏大)

 ドライバーに交通事故防止を呼びかける立て看板「飛び出し坊や」。日本全国に設置されているが、特に滋賀県内での設置数は群を抜いている。

 現在、「飛び出し坊や」関連商品の開発・製作をしているMahorova代表の川村潤市氏が行った調査では、「1973(昭和48)年、東近江市(旧八日市市)の社会福祉協議会の発注により、久田工芸の久田泰平氏により制作されたのが発祥なのではないか」と結論づけている。

 それが1980年代にみうらじゅん氏によって再発見され、2000年代後半、これまたみうらじゅん氏が火付け役となった「ゆるキャラブーム」にものり、日本中にその存在を知られることになった。最近は滋賀県を代表するキャラクターとしても認知されている。

 滋賀のローカル看板であった「飛び出し坊や」だが、近年は海外にも進出。

 飛び出し坊やファンによる、「今度外国に行くので持っていきたいと思います」という気軽な提案によりはじまった「とび太くん海外設置計画」。2011年にお隣韓国に設置されたのを皮切りに、その後、有志によって、中国、台湾、ネパール、バヌアツなど世界各地に運ばれている。かくいう筆者も設置者のひとりであり、インド・バラナシとモロッコ・フェズに設置してきた。

「道端の電柱にでも看板をくくりつけてくればいいんだろう」と思われるかもしれないが、これが意外と難しい。

 まず公道に設置した場合、現地の警察が飛び出してくる可能性が高い。仮に運良く警察に撤去されなくとも、近所の子どもに持ち去られる可能性も十分考えられる。

 そうなると設置場所は、おのずと店先や民家の軒先に限られてくる。さらに「交通安全を啓蒙するためのキャラクター看板」という存在と意図を、異国の人に理解してもらうのが非常に難しい。

「これはミッキーマウスか? ドラえもんか?」と質問攻めにあいながらも、一生懸命こちらの意図を伝えるのだが、いまいちわかってもらえない。最終的には「これを設置しておくと日本人がよろこぶのだな」といったあいまいな理解のまま、国際交流的ムードで設置してもらうのが常なのである。

 2015年10月現在、海外に設置された「飛び出し坊や」は10カ国以上。世界のどこかで「飛び出し坊や」に出会ったら、素直によろこんで、国際交流を深めて欲しい。

(文・写真/松岡宏大)