AERA STYLE MAGAZINE (アエラスタイルマガジン) 2015年 9/30号より 撮影:川口賢典
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 サッカー日本代表監督、ヴァイッド・ハリルホジッチ氏の単独ロングインタビューを、『アエラスタイルマガジン』誌(9/30号)が実現。最善の結果を生み出す指導者とは何を考え、どのように行動すべきか。考えに考え抜かれた知将の哲学は、自身の“装い”にまでおよぶ――。

 盛夏のうだるような暑さのなか、銀座中央通りにある「アルフレッド ダンヒル」に現れた日本代表監督は、すぐに試合時に着用するスーツを選びはじめる。

 親指と人さし指で生地の厚さをさぐり、慣れた手つきで質感を確かめていく。スーツに合わせるシャツやネクタイを吟味し、靴下の紺色がわずかに淡いとなれば、望みの色を求める。フィッティング時の指示にも迷いはなく、決断は素早い。自身の思い描くスタイルが明確なのだ。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ、63歳――。今年3月にサッカー日本代表の監督に就任した知将は、この5カ月間、日本サッカーの勝利に思いをはせ、どっぷりと身を浸してきた。見つめる先にあるのは、言うまでもなく、ワールドカップ予選突破、そして開催地ロシアでの勝利という目標だ。

 そんな多忙な日々のつかの間、ハリルホジッチは、大好きな服選びに興じていたのである。

 ハリルホジッチのファッションに対する情熱は、サッカーのそれにも決して引けを取らない。

「クラシックかモダンのどちらが好みかと言われれば、私はモダンなスーツが好きなんです。というのも、私には、まだ若い気持ちがあるので。服はたくさんもっていて、家にはいったい何着のスーツがあるか数え切れない。私の奥さんからはよく、『なぜこんなにたくさんもっているの』と言われるぐらいです」

 ハリルホジッチは、フランスのクラブ監督時代、ベストドレッサー賞に何度か選ばれている。同じくフランスでの選手時代には、パリコレに参加してほしいと誘われたこともあったという。

 ハリルホジッチは、ワールドカップブラジル大会(2014年)で、グループリーグ突破は難しいとされていたアルジェリア代表をベスト16に導いたのだが、このときの代表チームのスーツのデザインは、自らが決めた。それぐらいスーツに対する思い入れは強いのだ。

「監督というのは、すべて表現できないといけない。スーツを見苦しく着るというのが好きではないのです。監督は、チームのイメージです。毎回、試合のたびにスーツを着て、何百人というフォトグラファーがそれを撮ります。彼らの被写体は、ヴァイッド・ハリルホジッチという個人ではなく、日本の代表監督なんです。つまりそれは日本のイメージで、その写真が世界中に回るんです。選手に対しても、サポーターに対しても、スポンサーに対しても、私はリスペクトしなければならない。だから、ジャージーで来るわけにはいかない。それが私の哲学です」(文/一志治夫)