鉄または、型に鉄を流し込んでつくる鋳鉄は、重くて扱いにくいが、熱伝導率のよい素材だ。素材が厚いため蓄熱性にも優れている。鉄の鍋は中華鍋、鋳鉄はダッジオーブンが代表的な鍋だ。さらに鋳鉄の鍋にホーロー加工を加えた鋳鉄ホーロー鍋がある。ル・クルーゼやストウブなどのブランドが有名だ。豊富なカラーやデザインも人気で、実用性の高さからも愛好家が多い。
そもそもホーローとは、ガラス質のエナメル(釉薬)を焼き付けてコーティングしたもの。腐食しにくく、保温性、耐摩耗性が高く、においが移りにくいといった利点をもつ。鋳鉄の蓄熱性の高さに加え、重いフタによって密閉性も高いため、素材本来の旨みや栄養分を引き出せるので、煮込み料理に向いている。ただし、落としたりぶつけたりといった衝撃には弱く、割れてしまうこともあるので注意が必要だ。
こうした素材の特徴と先ほどのサイズを合わせて考えると、16センチの鍋はアルミの片手鍋が、汁物を作ったり、葉物をゆでたりするのに便利だ。20センチの鍋は煮物全般に使いやすい鍋で、アルミやステンレスがオールマイティに使えていいだろう。24センチはカレーやシチュー、おでん、煮魚など、じっくり煮込む料理に使いたい。鋳鉄ホーローやステンレスなどがいいだろう。
また、こうした鍋とは別に特別な機能を持つ鍋がある。そのひとつが圧力鍋だ。鍋と蓋を密閉することで鍋内部に圧力をかけ、通常よりも高温で調理できる。そのため時間のかかる煮込みなどが短時間で調理でき、時間とエネルギーを節約できる。玄米を炊く、豆を煮る、ビーフシチューや豚の角煮など時間のかかる料理が手軽に作れるのがメリットだ。一般的な圧力鍋は蒸気の音がシューシューする「おもり式」を採用しているが、フィスラーなどは蒸気の音がほとんどしない「スプリング式」を採用している。蒸気が怖いという人にはスプリング式がおすすめだ。
他にも鍋の余熱を利用して調理する保温調理鍋というものもある。サーモスのシャトルシェフが有名だ。加熱した鍋を火から外して、保温調理器に入れると、鍋の余熱だけで調理を進めてくれる。余熱調理なので、煮込みすぎて具材が溶けてしまうようなことはない。火を使わないで調理が進むので、キッチンにずっとついている必要がなく、外出している間に料理ができているというすぐれもの。火を使う時間が短いので、エネルギーの節約になるし、小さな子どもがいる家などにお勧めだ。圧力鍋が短時間で加熱調理できることがメリットなのに対し、保温調理鍋は火にかけていない間も調理が進むことがメリットのため、決して短時間でできるわけではない。似たような機能の鍋だが、この違いは認識しておこう。
新しい鍋がひとつ加わるだけで、調理意欲もわくし、新しい調理方法やレシピに挑戦したくなってくるもの。使い勝手をだけでなく、食への関心を高めるためにも、鍋の買い換え、買い足しを検討してみるというのはいかがだろうか。
(ライター・栗山琢宏)