――「ペンと箸」を通じて、田中先生自身が影響されたことは?
一番驚いたのは、手塚治虫先生です。ものすごく忙しい方だったのに、どうやってそれだけの家族サービスをしていたのかとひっくり返りました。漫画家としてすごいことはわかりきっていましたが、お父さんとしても神だと、本当に鳥肌が立ちました。家族のことは、忙しさを言い訳にしてはいけないなと思いました。
池上遼一先生の回はご家族から話を聞くだに、人間が到達すべき一つの理想像ではないかと感じました。立派な人間である必要はなくて、自然体に生きているということが、すごく素晴らしい、うらやましいと感じました。これは割愛した話なんですが、池上先生が水木しげる先生と街でばったり会った時に、「池上くん、どう? 食えてる?」と聞かれたそうです。池上先生はもうめちゃくちゃ巨匠なのに、水木先生からするとアシスタントだったから心配しちゃうという(笑)。素で言ったのか冗談なのかはわかりませんが、飄々とした池上先生の生き方というのは、やはり水木先生の影響が大きいのではないかと感じましたね。
――「ペンと箸」は、今後も長く続けていく予定ですか?
毎月、次のゲストはどうしようかなあと頭を悩ませて、ぎりぎりで回しています。もっともっと続けてほしいと多くの人が言ってくれるんですが、簡単に言ってくれるけどさあ、大変なんだよぉみたいな(笑)。毎回絵柄を真似るのとか、たぶん他の人はなかなかできまいという自信はあるんですけどね。
頑張ってもっといろんな人を取材して、漫画家さんのプライベートや家族関係について描きたいし、僕自身も知りたいと思います。ご家族と一緒にご飯を食べながら、驚くような話を聞けるのはすごく面白いし、取材漫画冥利に尽きます。「取材されたい漫画家の家族募集中」って広告を出したいなあ(笑)。