自宅で亡くなった後の葬式までの手続きは、病院で亡くなったときとどう違うのか。自宅で亡くなった後の注意点について、多くの葬式の相談にのってきた、葬儀相談員の市川愛さんに聞きました。
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自宅で看取った場合、家族は葬式までの手続きをどうすればよいのでしょうか。
「自宅の場合、病院で亡くなったときと手続きは異なってくるので、事前に準備しておくことが大切です」
こう話すのは、今まで葬式に関して5千件以上の相談にのってきた葬儀相談員の市川愛さんです。
「人が亡くなると、医師が死亡確認をし、死亡診断書を発行してもらいます。病院で入院中に亡くなれば、自動的に死亡診断書が発行されますが、自宅では残された家族が手続きをしなければなりません。まずは、かかりつけの医療機関があるかないかで、対応が変わってきます」
チャート図を見ると、かかりつけの医療機関があり、外来もしくは在宅医療で診療を受けている場合は、まずは主治医に連絡をとります。死因が明らかな場合などは、その場で死亡診断書が作成されます。その後、死亡診断書をもとに、死亡を知った日から7日以内に役所に死亡届を提出し、火葬許可証を発行してもらうことになります。火葬許可証がないと、遺体を火葬することができません。
一方、自宅内での突然死などで、かかりつけの医療機関がない場合は「死体検案書(死亡診断書と同内容)」を発行できる警察署に連絡します。通常は、連絡するとすぐに、実況見分のための警察官と警察医が来て、事件性の有無を調べます。死因が判明し、事件性がないと判断されれば、その場で検視をして死体検案書を作成してもらうことになります。死体検案書とともに死亡届を役所に提出すれば、死亡診断書と同様、火葬許可証を発行してもらえます。
「死体検案書を出してもらう場合、遺体を動かしたりしてはいけません。お風呂場で裸で亡くなったからといって勝手に服などを着せてしまったら、警察の実況見分・検案の妨げになってしまう可能性があるためです。最悪の場合、事情聴取を受けるケースもあります」(市川さん)
自宅で看取りをする場合は、葬儀会社を選ぶ際にも注意が必要です。一般的に、病院で亡くなると、病院に出入りしている葬儀会社を紹介されることが多いですが、自宅で看取ると、自ら探すことになります。
「自宅で看取りをしたいと考えているなら、事前にめぼしい葬儀会社を決めておくとよいでしょう。特に『自分らしい葬式』をするためにも、生前に家族と話し合いをしておくとスムーズに葬式に進むことができます」(同)
また、意外に知られていないのが、預金口座の凍結です。死亡届を役所に提出し、金融機関が口座名義人の死亡事実を把握した時点で、預金が凍結されるといわれています。死亡後の手続きでは、葬儀会社に支払う費用以外にも、結構な費用がかかってきます。だからこそ、前もって預貯金の中から用意しておくとよいでしょう。
(取材・文/編集部・馬場勇人)
※週刊朝日MOOK「自宅で看取るいいお医者さん」より抜粋