そして、個々のスキルやスピードでは日本が上回っていたものの、互角の好勝負を演じたのがフィジカルだった。以前のシンガポールはひ弱な印象があったが、今回のメンバー21人の平均体重は73.6キロで、日本の73.3キロを上回る。41分にはタテパスからカウンターで抜け出しかけた岡崎がフィジカルコンタクトで負けて、ボールを失うシーンがあったのも驚きだった。96年にプロリーグ・Sリーグができて、シンガポールも着実に進化している証拠だろう。
前回の両国の対戦は、04年のジーコ・ジャパン時代に遡る。敵地で猛攻を仕掛けながらシュートに正確性を欠き、交代出場の藤田俊哉の決勝点で振り切った。この時のジーコ監督は、試合後にこう激怒した。
「サッカーの世界では2-1というスコアしか残らない。いくら相手を圧倒して20本以上のシュートを放っても、それは記録に残らない」
やはり、歴史は繰り返すということなのだろうか。
(サッカージャーナリスト・六川亨)