シュートを放つ岡崎慎司(c)朝日新聞社 @@写禁
シュートを放つ岡崎慎司(c)朝日新聞社 @@写禁

 来年1月のアジア・カップを前に、「一度はアジアのチームと対戦したい」と指揮官のリクエストによりマッチメイクされたオーストラリア戦。11月18日に大阪のヤンマースタジアム長居で開催された一戦は、今野泰幸と岡崎慎司のゴールで日本が2-1の勝利を収めた。

 4年前のアジア・カップ決勝は李忠成の決勝点で日本が4度目の優勝を飾ったものの、その後のブラジルW杯予選はホーム、アウェイとも1-1のドローで、通算成績も7勝8分け7敗と全くの五分。来年のアジア・カップでも強力なライバルであり、ともにブラジルW杯後に新監督を迎え、チームがどのように進化したかを確認する意味でも興味深い対戦となった。

 ハビエル・アギーレ監督の基本システムは、相手がボールを保持している時は「4-3-3」の布陣で守備を固め、マイボールになると1ボランチがDFラインに下がると同時に、両サイドバックが高い位置に上がり、「3-4-3」となる。

 対するオーストラリアは、オーソドックスな「4-4-2」が基本システムだったが、アンジェ・ポステコグルー監督に代わり、日本とまったく同じシステムを採用していた。

 立ち上がりの両チームは失点のリスクを避けるためロングボールを多用。DFラインから前線へ長いパスを出すさまは、まさに“ミラーゲーム”だった。違いがあれば、日本はDFラインの背後にパスを出して岡崎を走らせたのに対し、オーストラリアは1トップのマシュー・レッキーの頭を起点にしたポストプレーで活路を開こうとしたことだ。

 これといった見せ場もないまま前半の45分間が終了。日本は後半から遠藤保仁に代え今野を投入。長谷部誠と今野のどちらをアンカーに置くのか確認したところ、2人はダブル・ボランチを形成し、左MFだった香川真司がトップ下に入る「4-2-3-1」にシフトした(試合後の会見で、前半なかばからシステムを変えたとアギーレ監督は明かした)。

 このシステム変更と、前半のハイペースがたたりオーストラリアは守勢一方になる。61分にはそれまで徹底したニア狙いが奏功し、右CKから今野が先制する。オーストラリアの選手は全員がニアに引きつけられ、ファーサイドにいた今野はフリーとなってこぼれ球を頭で押し込んだ。

 さらに68分、本田圭佑のインターセプトによるショートカウンターで得た左CKのこぼれ球から岡崎が追加点を奪う。CKはクリアされたものの、攻め上がっていた森重真人が右サイドをドリブル突破し、また抜きから岡崎のヒールキックによる決勝点をアシストした。

 唯一惜しまれるのは、日本から4ゴールを奪っている“天敵”ティム・ケーヒルに92分に反撃を許したこと。それでも、オーストラリアという強敵に、ロングボール一辺倒の試合からポゼッション・スタイルに移行して、「相手の状況によってプレーは変わる」(アギーレ監督)ことを実践できたこと、徹底したニア狙いから一転、相手を欺いてセットプレーから得点したこと、インターセプトからのカウンターなどチームは随所に“アギーレ色”を出せたことは大きな収穫だ。

 オーストラリアにしてみれば、「日本は何をやって来るか分からない、抜け目のないチーム」という印象を持ったに違いない。日本代表の“メキシコ化”は着実に進んでいるようだ。
サッカージャーナリスト・六川亨)