それが今年はまるで違う。日本シリーズ進出を決めた18日の巨人戦は、阪神の変化を象徴する一戦と言えるだろう。1回表に生え抜きの上本博紀が内野安打で出塁、鳥谷敬が中前打で続いてチャンスを広げ、2死後に外国人のマートンが3ラン、さらに移籍組の福留孝介がソロホームランを放ち、生え抜き組と移籍組の絶妙な”アンサンブル”で4点を奪った。

 投手陣は、巨人戦の初戦で2年目の藤浪晋太郎が7回を1失点に抑え、さらに9回以降を福原忍、呉昇桓の方程式で抑え、ファイナルステージを戦える手応えを掴んだ。移籍組でマウンドに立ったのは巨人との1~3戦目、中継ぎで活躍した高宮和也1人だけで、野手にくらべるとバランスはよくないが、移籍組に頼らない生え抜きの心意気を示すには格好の一戦になった。

 ちなみに、広島とのファーストステージから巨人とのファイナルステージまでの6戦を通じて、スタメンに名をつらねた野手の生え抜きは延べ36人に達し、移籍組の18人に大差をつけた。こういう生え抜き、若手選手の抜擢は、アマチュア球児を獲得するスカウティングにも大きな影響を与える。5年前まではドラフト会議で高校生を指名しても指導者が起用してくれないためか、大学生や社会人を主体とする即戦力候補を多く指名する傾向にあった。

 それが10年以降の過去4年間、高校生が1、2位の上位8人中5人と多数派を占めている。この中から藤浪が主戦投手にのし上がり、入団3年目の歳内宏明が一軍戦力になろうとしている。阪神の若返りは確実に進行している。

 阪神4連勝のもう1つの要因は日程である。巨人が優勝を決めたのは9月26日のDeNA戦。ここから10月15日のCSファイナルステージ初戦まで19日間の空きがある。この間、阪神は広島との2位争いを制すため激戦を繰り広げている。

■9月29日 阪神1-0 DeNA(延長10回サヨナラ勝ち)
 ゲーム差なしで2位広島、3位阪神

■9月30日 阪神0-1 DeNA
 広島がヤクルトに7対6で勝って2位確定までマジック1とする

■10月 1日 阪神4-2広島
 最終戦を勝つ。ゲーム差なし、勝率は1厘差で3位

 10月7日の広島対巨人で、広島が1対4で敗れたため、阪神は0.5ゲーム差で2位になり、CSのファーストステージを甲子園球場で迎えられた。シーズンの最終盤までペナントレースの緊張感を持続できたのだ。さらに、10月11、12日の広島とのファーストステージを僅少差で切り抜け(1勝1分け)、巨人とのファイナルステージに臨むことができた。

 それに対して、巨人は独立リーグとの練習試合で調整しただけである。勢いの差は歴然である。

 優勝を早い段階で決める強いチームほどCSでは不利になるという矛盾を改善しない限り、今年のような不条理は毎年繰り返されると断言してもいい。
(スポーツライター・小関順二)

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