クライマックスシリーズ(以下CS)のファーストステージは、3位広島と2位阪神の間で10月11日から甲子園球場で行われる。
このシリーズを左右しそうなのが10月6日に行われた広島対巨人だ。広島・前田健太の8イニング3失点の力投もむなしく、1対4で敗れた試合だが、日程通り前日の5日に行われていれば、前田はファーストシリーズの阪神戦初戦に中5日で先発できるはずだった。それが台風で1日延びたため、先発すれば中4日の登板になってしまう。
昨年はどうだったかと言うと、CSファーストステージの阪神戦初戦、中5日で先発して7回を1失点に抑えチームを勝利に導いている。わずか1日の差だが、中4日と中5日では肩の疲労回復という部分で大きな差がある。
中5日で投げることが有利、と思われたかもしれないがそうではない。過去2年、前田は中5日で投げたときの成績がよくない。中5日以上の間隔で投げたときと比較してみよう。
■2013年
中5日/67.1回、50安打、防御率2.67(中4日・2試合を含む)
中5日以上/108.1回、79安打、防御率1.74
通算/175.2回、129安打、防御率2.10
■2014年
中5日/73回、65安打、防御率3.08
中5日以上/114回、99安打、防御率2.29
通算/187回、164安打、防御率2.60
中4日が当たり前のメジャーリーグで投げたい前田にとって中5日はクリアしなければならないハードルだが、この成績を見る限り前途は多難である。
対する阪神は10月1日の最終戦で広島を6回、1失点に抑えた能見篤史の先発が有力。前田とは反対に中9日の間隔が不安材料になるが、中4日で投げることにくらべれば不安は小さい。今季広島との対戦は2勝1敗、防御率1.71と抜群の相性。
また、昨年は同じ広島とのCSファーストステージで能見を温存し、初戦を藤浪晋太郎が先発、2戦目をメッセンジャーが先発という奇策で臨んで連敗を喫している。同じ轍は踏まないだろう。
投手のことばかり書いたが、短期決戦は投手有利というのが鉄則。今年の前田のような例外はあるが、登板間隔を十分取って、勝負どころでは惜しみなく投手を注ぎ込んで反撃の芽を摘むというのがCSの戦い方だ。
とくに重要なのが後半に勝負が持ち込まれた場合の戦い方。リリーフ投手の顔ぶれはどうだろう。
広島は守護神のミコライオが左股関節の故障で登録を抹消され、CSの登板ができなくなったことが大きい。ミコライオの代役を務める中崎翔太は勝てば2位が決まる最終戦に前田の後を引き継いでマウンドに上がったが、最終回に巨人の下位打線につかまり、決定的な4点目を献上した。
そんなこともあり、中継ぎでシーズン前半に活躍した一岡竜司の故障からの復活が取り沙汰されているが、これは不確定要素を見込まなければ勝利の方程式を確立できないと宣伝しているようなものである。対する阪神の守護神は、最多セーブに輝いた呉昇桓。この部分でも阪神のほうが有利である。
CSのファイナルステージでは、優勝チームの巨人が勝ち上がったチームを迎え撃つ。2球団との対戦成績は対阪神が13勝11敗、対広島が13勝10敗と、少しずつリードしている。
昨年は3位から勝ち上がった広島を3対2、3対0、3対1と突き放しているが、このとき活躍した山口鉄也、マシソン、西村健太朗の「勝利の方程式」が、今年は機能不全に陥っている。3人の成績は以下の通りだ(HPはホールドポイント)。
山口鉄也 60試合、4勝3敗39HP、防御率3.04
西村健太朗 49試合、4勝4敗20HP、防御率2.98
マシソン 64試合、6勝6敗30セーブ、防御率3.58
昨年は3人揃って防御率1点台前半を記録しているだけに落ち込みの激しさは尋常ではない。西村が8、9月、山口が9月以降、調子を取り戻しているのが救いだが、昨年ほど盤石ではない。どのチームが勝ち上がっても熱戦が期待できそうだ。
(スポーツライター 小関順二)